第七景・一騎討ち
「しかし、現れる怨霊を蹴散らす事は出来ても、封じる力は俺にはない。一体どうしたら?」
「奴等の巣食う竹林に奪われた生命の泉が……」
「生命の、泉?」
「万病に効くと言われるその水こそが、怨霊がこの世に蔓延る源。取り戻す事が出来れば怨霊も消え、姫様の命も永らえる事が出来ましょう」
***
見張りの怨霊達が次々に倒されていく。その速さ、風が吹き抜けるかの如く。
「鵺だあああ! 鵺が現れたぞおおお!」
仲間の声を聞いた青龍は重そうに腰を上げた。でもその目は闘志に満ち溢れている。
「俺たちも行くぞ」
玄武の声に朱雀と白虎は頷いた。
月夜美は次々に朱雀、白虎、玄武を倒していく。そしてついに生命の泉へとやって来た。
「待ちくたびれたぜ……」
青龍はニヤリと、不敵に口角を上げた。
「生命の泉、返して貰うぞ」
「どうして泉の存在を……? 神子の知恵でも借りたのか? まぁいい。そんなに返して欲しくばこの俺の屍を越えていけえええ!」
空には三日月が消えるように細く輝いている。
朔弥の笛の音が、二人の戦う竹林に不釣り合いなまでに美しく響いていた。
お互い死力を尽くした最後の一太刀。
背を向けたまま、二人は同時に倒れ込んだ。
時を同じくして、朔弥の笛の音も止み、そのまま力尽きるように倒れる。
「姫様ッ!」
慌てて惟光が支える。
月夜美が屋敷を去ってからというもの、日に日に弱っていくのが手に取るように分かった。
月が欠けていくと共に、朔弥の命の灯火も消えようとしていた。
「惟光……」
朔弥は消え入りそうな月を見つめ、力なく微笑む。
「ツクヨミ様にはもう、会えぬのでしょうか……?」
月夜美と惟光の約束など知らない朔弥は、弱っていく身体で今も月夜美を待ち続けている。
惟光は胸が引き裂かれる思いだった。
「何をおっしゃいますか! 会えぬ事などございません!!」
「もう良いのです、惟光。朔弥の事は朔弥が一番良く分かっております」
「…………」
「この命、あとどれほどもつか。ずっとこの時が来るのを覚悟もしておりました」
「……ッ」
「しかし……何故でしょう? こんなにも覚悟が鈍るのは……」
「……ひ、めさま?」
「ツクヨミ様に出会ってからというもの、おかしいのです。この辺りがひどくざわついて……」
朔弥は自分の胸をぎゅううっと押さえた。
「ツクヨミ様の事を想うと、ここが潰れそうなほど苦しいのです」
ぼんやりと月を見つめる朔弥の目から、一筋の涙が溢れた。
「惟光……今まで、世話をかけましたね?」
「何をおっしゃいますか! そのようなお言葉、惟光は聞きとうありません!」
「ツクヨミさま……お別れに、ございます」
月を掴もうと伸ばした手が、パタリと落ちた。
「姫様……? 姫様!? 姫様ああああ!!」




