第四景・剣舞
その頃、鵺のいない都では怨霊達が暴れ始めていた。
「怨霊だぁ! 怨霊が出たぞおおお!」
「つッ、ついに大内裏まで!?」
鵺によって何とか平安を保っていた大内裏にまで怨霊の魔の手は忍び寄っていた。
その先頭には青龍の姿。悲鳴と共に琴の音が途絶えた。
***
藤代の剣舞が始まる。
「「「きゃあああ!!」」」
客席から黄色い歓声が上がった。
やはり藤代はすごい人気だ、と真由は思う。
客席は皆、藤代に恋している。
(あー、美月ちゃんにも客席から見せてあげたかったな……)
真由はぼんやりと舞台裏でスタンバイしているだろう友人の事を思った。
***
今まさにとどめを刺そうとしている青龍が手を止める。その隙に人間は逃げ出してしまった。
今まで青龍がとどめを躊躇した事など一度も無かった。
「どうした、青龍?」
どんなに斬っても満たされない。
ただ逃げ惑う生ぬるい京の人間達じゃ張り合いもない。
「つまんねぇ……」
青龍は一言、吐き捨てるように呟いた。
「青龍は鵺がいなくて寂しいんでしょ?」
「はぁ!?」
「もしかして恋患い?」
「朱雀、てめぇ殺されたいか……?」
「うそうそ! 冗談だよ! やだー顔怖ーい」
朱雀は白虎の影に隠れて様子を伺っている。でもその顔は何だか少し楽しそうだ。
青龍はそんな朱雀を思いきり睨むと、わざとらしく舌打ちをした。
「竹林に紛れ込んだ鼠の情報は掴めたのか?」
「やはり六条院に住む姫の使用人だ」
「大内裏にほど遠い六条院に何故そんなに強い結界が?」
「それが……」
「どうした?」
「どうやらその姫が強い神子の血をひいてるらしい」
「それであの辺の空気が澄んでやがるのか」
青龍は思い出したかのように眉間にしわを寄せる。
「邪魔だなぁ……そいつ」
「殺しちゃう?」
朱雀の言葉に青龍は不敵な笑みで応えた。




