続第三景・出逢い
「薬の用意をしてまいります」
惟光はパタパタと屋敷の奥へ急ぎ足で入っていった。
朔弥はまだ月を見ている。
「……ここは静かだな」
不意に聞こえた声に振り向く。
そこには見知らぬ男が立っていた。
月のように美しいその男に朔弥は思わず見惚れた。
「あの笛の音は?」
「朔弥の笛にございます」
「……いい音だ、」
それだけ言うと男は突然その場に倒れ込んだ。
「もし! どうなさいました!? もし!」
朔弥が倒れた男に駆け寄ると、彼の懐は血に染まっていた。
「姫様? どういたしましたか? 大きな声なんか出し、て……ッ!?」
――ガシャーン!!
戻ってきた惟光は声も出ないほど驚いた。
ついさっき遭遇した鵺が、姫の膝に血まみれで 倒れていたからだ。
驚きを隠せずに持っていた折敷ごと落としてしまう。しかし次の瞬間、状況を把握した。
「姫様! お離れください!」
「何をするのです! 惟光! 放しなさい!」
「此奴は都を揺るがす鵺ですぞ!」
「それが何です! 早く手当てしなければ死んでしまいます!」
「しかし……」
「これは朔弥の命ぞ。そなた、主人の命が聞けぬと申すか!?」
「……ッ、いえ。今すぐ準備致します」
惟光は朔弥の迫力に負け、そそくさと手当ての準備をしに行った。
「、お前……ッど、して?」
力のない手が頬に触れる。朔弥はその手を、そっと包んだ。
「安心してくだされ。朔弥がそなたをお守り申します」
男はその言葉を夢うつつで聞きながら、意識を手放した。
***
(美月ちゃん……)
真由は美月のあまりの成長に驚き、感動していた。
あれほど苦手だった大久保とも、演技上ではあるが話せている。
稽古からは想像つかないほどの女優っぷりだ。
「ねぇ、あれまさか……」
「B組の安倍さん……!?」
先程もひそひそと話していた女子達だ。
(黙って舞台見れないのかな?)
「えー、ちょー地味なのに。何生徒会の舞台とか出ちゃってんの?」
「なんかさぁ、篠宮くんと仲良かったよね?」
「まさか篠宮くん侍らせて生徒会に口利いたとか?」
「マジウザイんですけど。テンション下がるわー」
(そんな訳ないだろ! 何も知らないくせに!)
隣でクスクス無駄口を叩き始めた二人に、真由の怒りはピークに達した。
思わず文句を言おうとした瞬間、後ろから肩をポンと叩かれる。
「カイちゃん……!?」
いつの間にか後ろの席に座っていたみたいだ。
「みづき先輩、カッコイイね」
そう言ってニッコリ笑うカイトに、すっかり毒気を抜かれてしまう。
(でも、良かった。おかげで舞台の邪魔しないで済んだ)
気が付くと女子達が静かになっている。
舞台には藤代が怨霊を引き連れて現れていた。




