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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
67/126

デートは波瀾万丈

「あッ……!」


 大久保は美月の携帯を取り上げて、まだ向こうで真由の声がする電話を勝手に切った。

 美月は何か言いたげな目をしていたけれど、それ以上は何も言わない。


(言いたい事あるならハッキリ言えよ)


 大久保はいつも美月のそんな態度にイライラしていた。


「今、デート中。次電話出たら……殺す」

「ひいいい! ごめんなさいいい!」


 美月は携帯を返してもらおうと手を出すと、返す代わりにぐいっと手首を掴まれた。そのまま引き摺られるように歩く。


「えッ?」

「携帯返したらお前逃げそうだから没収」

「いや、ちょっ! 手! 手!!」


 放してくれるよう必死で訴えたが、その拘束を解く気はさらさらなさそうだ。


 二人は今デートをしている……つもりらしい。

 秘密特訓が九条にバレたのが運の尽きだった。

 全然特訓の成果が上がらない美月に九条が言い放った一言。


『特別メニューで、デートしてきて』


 冗談だと思われたその一言も、大久保にとっては生徒会長からの立派な命令だった。


「あのぉ……手、放してもらえませんか?」

「デートは手を繋いで歩くべし。第一関門クリアだな」


(これも九条先輩の指令ですか? これ以上いけめそオーラ浴びたら溶ける! もう帰りたい……誰か助けて)


「さっさと歩け」

「はいいいい」


 それにしても。

 これでは手を繋いでラブラブデートというより、手首を掴まれて強制連行されているようにしか見えない。


「どこ、行くんですか……?」

「デートの定番は観覧車、だと」

「夜の観覧車とはなんとベタな……」

「そうなのか?」

「え、もしかして大久保様、観覧車……?」

「乗った事ない」

「えぇ!?」

「……なんだよ」

「イエ、ナンデモアリマセン」


 美月は以前から、時々彼ら(特に九条)は常識はずれな事言い出すと思っていた。


(ホントに浮世離れしてるというか)


「……こんな風に外に出るのも初めてだし」

「そう、なんスか?」

「ずっと人間界との交流を絶ってきた。だから俺たちにとって学校は唯一の外界だ」

「だからあの人あんな楽しそうなのか……」


 やたらと学校行事を張り切って仕切る生徒会長の顔が不意に目に浮かぶ。そう聞いてしまうと、これまでのワガママっぷりも思わず許してしまいそうになった。



「結構並んでるな……」


 大久保が呟く。美月はその視線の先を目で追った。

 夜の観覧車には、案の定カップル達が列を連ねている。最後尾には四十分待ちの文字。

 それでも、次々にカップルが来ては、新たな列を作っていく。


「あんなもんに並んで乗って、何が楽しいんだか」


 大久保は面倒臭そうにため息をついて、独り言のように吐き捨てた。


「帰る?」

「え……?」

「なんか並んでるし。別にいいんだぜ? 嫌なら断って。九条には俺から上手く言っとくし」

「並びましょう!」

「は? なぁお前、俺の話聞いてた?」

「見せてあげます。並んでも乗る価値!」


 美月は掴まれていた手首を引き寄せて、カップルに混ざって列に並んだ。

 どうしてそんな事したのか自分でも分からない。

 それでも美月は大久保に外の世界を見せたかった。


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