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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
60/126

稽古は続くよ、どこまでも

「最初ロミジュリの予定じゃなかった?」

「だって、ほら。姫の衣装入らなかったから」

「それはそうだけど……路線変更が大胆過ぎるよ、九条先輩」


 時は平安。


「え、平安!!?」

「なんか着物で思いついたのが平安だったんだって」

「遡りすぎじゃない?」


 ある一人の病弱な姫君がおったそうな。


「ゴホゴホ……」

「大丈夫ですか?姫」

「ゴホッ、ゲホッ、おえぇ……」


「はい、ストップー!」


 九条の芝居を止める声が体育館に響く。今日何度目かの光景に、皆は落胆の声を上げた。


「眼鏡さん、姫が嗚咽しない!!」

「ッ、咳き込んだら変なトコ入っ、た……ゲホッ」

「マネージャー! 姫に飲み物!」

「はいはい、大丈夫!? 美月ちゃん」

「だ、だいじょーぶ……」


 平安とは名ばかりの都。実際には怨霊がはびこり、都の人たちに恐れられていた。


ぬえだ!」

「鵺が現れた!」


「はい! ここで大久保登場」


 怨霊を操り都を闇へと陥れる鵺と恐れられた男あり。その者、不可解な洋装に身を包み……。


「……え、なんで大久保軍服?」

「九条先輩の趣味」

「平安時代設定はどこへ?」

「その辺は深く突っ込まない」


「そしてある満月の夜、二人が出逢う! ここ重要なシーンだからね!」


「…………」

「(美月ちゃん、セリフ!)」

「ん?……あ、ッ。……ま、まぁ。な、なんてきれいなつき」

「……ここは、静かだな」

「え? ぎゃあああ!!!」


 声に振り向いた美月は、悲鳴を上げて体育館の隅まで走って逃げる。


「あぁもう! 普通に驚いてどうすんの、眼鏡さん!」

「だ、だっていきなり後ろに大久保様があああ」

「俺のせいかよ」

「ひいいいいいい! 違います違います違います違います」

「あぁ、一旦ストップ。休憩入れるか。マネージャー五分充電!」

「ハイ! 美月ちゃーん大丈夫?」

「うわーん! まゆううう」

「おーよしよし」

 

 男性恐怖症の美月と、女嫌いの大久保。この二人の稽古が順調に進むはずもなく……。


「なんか大変そうだね……」

「姫ちゃん、ちょー面白いね」

「おいおい、楽しむなよ」


「熊谷! 相原! お前らいつまでサボってんだ!? 振り起こし始めるぞ!」

「「はーい」」


こうして、稽古は夜遅くまで続くのであった。

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