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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
56/126

告白。そして……

 純血の絶対的タブー。


 それは一人の人間を愛する事。



「それって……」

「特定の誰かを愛してはいけない。それは愛故にその人を食い尽くしてしまうから」


 掟は、守らなければならなかった。それが鬼として生まれた九条の宿命さだめだった。

 そのために何人もの女を抱いた。数え切れないほど……。どの女にも固執せずに、ただ吹き抜ける風のように。


 抱いた女の誰一人として顔も名前も覚えていない。それなのに。


「最初はね、彼女の撮る写真に惹かれたんだ」


 自分があんな風に笑っているなんて、知らなかった。過ぎ行く刻をただ流れていくだけの九条のほんの一瞬。その瞬間を切り取る人に会ってみたくなった。


 その後は、堕ちるだけ。


 愛してしまった。会う度に気持ちを止められない。


「どうしていいか……分からないッ」


 掟を破った純血種の末路は……。


 愛に餓えて屍食鬼ししょくきに堕ちるか。愛を貫き彼女を食い尽くすか。


 それでも紘乃を失う訳にはいかなかった。



「……こんな気持ちッ、初めてだった、んだ……」

「……先輩」


 九条の眼から、涙が一粒こぼれ落ちた。


「紘乃にも、そうやって素直に言えばいいのに」

「……こんな、カッコ悪いとこ見せられない」

「先輩って意外と可愛いんですね」


 九条がいじけて目を逸らすから、可笑しくなってしまう。美月がこっそり笑ったら、気付いた九条はぷくーっとほっぺを膨らませて怒る仕草。


(だからそういうトコが可愛いんだって……。気づいてないんだこの人)


「分かりました。これからどの道が最善か、一緒に探しましょう」

「応援、してくれるの?」

「あたしはあくまで紘乃の味方です。紘乃を泣かせるような事させません」

「それは僕だって! でも、どうしたら……?」

「とりあえず他の女性に手出すの止めましょう」

「でもそしたらひろのが!」

「まぁ当分はこれで我慢してくださいよ」


 美月は九条の手首にそれをはめると、九条は不思議そうに眺めた。


「何これ? ……ぱわー、ばらんす?」

「実は夕樹の持ってた薬の成分調べて、あたしなりに対抗出来る試作品作ってみたんですよ。飲むより身につけるタイプのが安全かな、って思って」

「眼鏡さん、君は何でも手を出すんだね……?」

「今、裏の世界でかなりヒットしちゃって、入手困難なんですよ」

「これ付けてればいいの?」

「ある程度の血の欲求は抑えられると思いますよ。あとはあたしが時々メンテナンスします」

「ふーん……」


 手首を見つめる九条はとても冷たい眼をしていた。


「それでも僕が屍食鬼ししょくきになったら……?」


 急に空気が張り詰める。


「その時はあたしが命を賭けてでも止めてみせますッ!」

「……あははははははっ!!!」

「ちょっ、何で笑うんですかぁ!?」


 九条は未だに肩を震わせて、涙まで流して笑ってる。


(本気で言ったのに!)


「あはは! あーごめんごめん……あまりに頼もしくて、つい」

「ヒドイです、先輩」

「いや、君なら出来そうな気がして、さ。嬉しくなっちゃった」

「嬉しくて爆笑しますか、普通?」

「頼りにしてますよ? 眼鏡さん」

「当たり前です。絶対大久保くんに殺させたりなんかしませんから!」


 美月の言葉に九条は、今度は満足そうに笑った。

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