告白。そして……
純血の絶対的タブー。
それは一人の人間を愛する事。
「それって……」
「特定の誰かを愛してはいけない。それは愛故にその人を食い尽くしてしまうから」
掟は、守らなければならなかった。それが鬼として生まれた九条の宿命だった。
そのために何人もの女を抱いた。数え切れないほど……。どの女にも固執せずに、ただ吹き抜ける風のように。
抱いた女の誰一人として顔も名前も覚えていない。それなのに。
「最初はね、彼女の撮る写真に惹かれたんだ」
自分があんな風に笑っているなんて、知らなかった。過ぎ行く刻をただ流れていくだけの九条のほんの一瞬。その瞬間を切り取る人に会ってみたくなった。
その後は、堕ちるだけ。
愛してしまった。会う度に気持ちを止められない。
「どうしていいか……分からないッ」
掟を破った純血種の末路は……。
愛に餓えて屍食鬼に堕ちるか。愛を貫き彼女を食い尽くすか。
それでも紘乃を失う訳にはいかなかった。
「……こんな気持ちッ、初めてだった、んだ……」
「……先輩」
九条の眼から、涙が一粒こぼれ落ちた。
「紘乃にも、そうやって素直に言えばいいのに」
「……こんな、カッコ悪いとこ見せられない」
「先輩って意外と可愛いんですね」
九条がいじけて目を逸らすから、可笑しくなってしまう。美月がこっそり笑ったら、気付いた九条はぷくーっとほっぺを膨らませて怒る仕草。
(だからそういうトコが可愛いんだって……。気づいてないんだこの人)
「分かりました。これからどの道が最善か、一緒に探しましょう」
「応援、してくれるの?」
「あたしはあくまで紘乃の味方です。紘乃を泣かせるような事させません」
「それは僕だって! でも、どうしたら……?」
「とりあえず他の女性に手出すの止めましょう」
「でもそしたらひろのが!」
「まぁ当分はこれで我慢してくださいよ」
美月は九条の手首にそれをはめると、九条は不思議そうに眺めた。
「何これ? ……ぱわー、ばらんす?」
「実は夕樹の持ってた薬の成分調べて、あたしなりに対抗出来る試作品作ってみたんですよ。飲むより身につけるタイプのが安全かな、って思って」
「眼鏡さん、君は何でも手を出すんだね……?」
「今、裏の世界でかなりヒットしちゃって、入手困難なんですよ」
「これ付けてればいいの?」
「ある程度の血の欲求は抑えられると思いますよ。あとはあたしが時々メンテナンスします」
「ふーん……」
手首を見つめる九条はとても冷たい眼をしていた。
「それでも僕が屍食鬼になったら……?」
急に空気が張り詰める。
「その時はあたしが命を賭けてでも止めてみせますッ!」
「……あははははははっ!!!」
「ちょっ、何で笑うんですかぁ!?」
九条は未だに肩を震わせて、涙まで流して笑ってる。
(本気で言ったのに!)
「あはは! あーごめんごめん……あまりに頼もしくて、つい」
「ヒドイです、先輩」
「いや、君なら出来そうな気がして、さ。嬉しくなっちゃった」
「嬉しくて爆笑しますか、普通?」
「頼りにしてますよ? 眼鏡さん」
「当たり前です。絶対大久保くんに殺させたりなんかしませんから!」
美月の言葉に九条は、今度は満足そうに笑った。




