表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
55/126

TABOO

「失礼しまーす……あれ?」


 美月が生徒会室のドアを開ける。しかしそこには、誰もいなかった。


「どうすっかな、これ?」


 先日かなり不可抗力で生徒会の仕事を手伝ってからというもの、何故か生徒会でもない美月に生徒会の事務作業が回ってくるようになってしまったのだ。


(なんであたしが……とか怖くて言えない!)


 美月の弱点を見事に利用した、九条の策略であった。


(アンケート集計終わったんだけど……適当に机の上置いといていいのかな?)


 律儀に仕事を終えた美月は、生徒会室をウロウロと、挙動不審に歩き回った。



――ガラッ。


(あ、誰か来た……ッ!)


「はぁ……」


 九条は溜息をついて、ソファに雪崩れるように身を埋める。


(……って、なんで隠れてんのあたし!?)


 美月は思わず条件反射でソファの影に身を隠した。別に悪い事をしていた訳じゃない。むしろ代わりに仕事をして感謝される立場だ。

 いつ出て行こうかタイミングを見計らっていると、また誰かが生徒会室のドアを開けた。


「おい」


(あ、大久保様……)


 その声は聞いただけで不機嫌と分かる。

 美月はソファの影から二人の様子を伺った。


「もう動いていいのかよ?」

「あぁ。心配かけて悪かったね」


(そういえば九条先輩、倒れたらしいって噂で聞いたな)


 そして偶然か、紘乃も二日前から学校を休んでいる。

 美月も心配して紘乃にメールを送ったのだが、『大丈夫』とだけ短い返事が返ってきた。


(もしかして何かあったのかな……?)


「別にお前の心配はしてねぇよ」

「そっか。ごめん」

「謝るくらいならもう二度とあんな真似すんなよ」

「……分かってる」

「分かってねぇよッ!!」


(……ッ!?)


 声を荒げた大久保は九条の胸ぐらを掴んで思いきり睨み付けた。九条はそれを怒る訳でも、恐れる訳でもなく、ただ静かに見つめていた。


「分かってる……分かってるんだ」

「だったら、さっさと別れるんだな」

「それは……」

「取り返しつかなくなるぞ」

「もう、遅いよ」

「純血の掟忘れた訳じゃねぇだろ!?」


 九条は大久保の言葉に、答える代わりに、悲しそうに微笑んだ。


「お前、まさか、本気なのか……?」

「……ごめん」

「俺に謝るなよ……」


 大久保は胸ぐらを掴んでいた手をそっと離す。


「僕が道を踏み外しそうになったら、」

「…………」

「迷わず殺してくれ」


 そう言った九条は、とても優しい顔をしていた。

 大久保は何も答えずに、強くドアを閉めて出ていった。





「そろそろ出てきたら?」


 九条の眼は真っ直ぐに美月の姿を捕らえている。隠れていたつもりが、九条の前では全く無意味だったようだ。


「……気づいてましたか?」

「聞き苦しい事を聞かせてしまって悪かったね?」

「いえ」


 苦笑いで謝る九条は、今にも溢れる想いを必死に堪えているみたいだった。


「あの、純血の掟って……?」

「あぁ……」


 九条は遠い目をして、苦しそうに笑った。


「純血にはね、人間と共存する上で犯してはならない絶対的なタブーがあるんだ」

「絶対的な、タブー……?」


「それは、一人の人間を愛する事」


(……え?)


「それが純血であるが故に背負わなければならない運命さだめだよ」


 九条の眼が、静かに揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ