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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
52/126

恋する乙男

 真由が朝教室に行くと、紘乃が美月とごろにゃんしていた。


「おはよーまゆ」

「まゆりん、おはよー」

「お、おはよ……」


(……なんだろう、この光景?)


「どうしたの、ひろちゃん?」

「最近ごろにゃん出来なくて寂しいんだよねー?」


 美月は自分の胸に顔を埋めたままの紘乃を、撫でながら優しく微笑んだ。


「えっと……?」

「さやちゃんのトコに司くんが来てるんだもん」

「あの馬鹿、朝っぱらから」

「だからあたしは美月ちゃんとごろにゃんするの!」

「はいはい。いつでもどうぞ」

「あ、そういう事だったの?」

「見てんじゃねーよ、しのみや!」


 美月は隣に座る篠宮をギロリと睨む。そうは言っても、学年一の美人と謳われる紘乃と、無駄に豊満な美月が朝から戯れている姿は、クラスの注目の的だった。


(美月ちゃん、そんなに篠宮くんにだけ厳しく当たらなくてもいいのに)


 真由は毎日そう思っているのだが、それを美月に言うと火に油を注ぐようなものだとよく知っている。黙って篠宮を見ると、困ったように笑っていた。


「真由!」

「え? 小澤くん!?」

「ちょっといい?」

「う、うん……。な、なに?」


 突然クラスに現れた小澤に、真由は動揺を隠せない。小澤がこのクラスを訪れた事など、今まで一度もなかった。


「おやおや。呼び出しですかぁ? 妬けるねぇ」

「もう美月ちゃん! そんなんじゃないって!」


 慌てて真由はパタパタと小澤と一緒にどこかへ行ってしまう。

 篠宮は昨日不意に感じた違和感を思い出した。


「なぁ……小澤と野々村さんってあんな仲良かったっけ?」

「あら、気になりますか?」

「……別に」


(別に……? 何だよ、別に、って)


 篠宮は自分で答えた言葉に疑問を覚える。こんなに気になって心中穏やかでないのに、『別に』な訳がない。


「いつの間にか真由呼びだしね~」

「なんか、楽しそうだね……美月ちゃん」

「そりゃあ、恋する乙女を見てるのは楽しいですよ。な? しのみや?」

「俺はもうダメだぁー……」

「落ち込んでる落ち込んでる」


 篠宮はガックリと肩を落とした。その姿を見て、美月が楽しそうにニヤニヤと笑う。


「え、もしかして篠宮くんってまゆりんの事好きだったの?」

「……ッ!?」

「うわ、鼻の下伸びてるよー。もう一度その鼻へし折ってやろうか?」

「美月……真顔でそういう怖い事言わないで。マジでトラウマ!」


 小澤の昨日の言葉が脳裏を過る。こんなに永く刻を共にしてきた篠宮でも時々、小澤が何を考えているのか分からない時がある。


「さっさと当たって砕け散ってしまえ!」

「いやいや、砕け散っちゃマズイだろ!?」

「そのまま粉々になって消えちゃえよ」

「美月ってさ、俺の応援してるの? してないの?」

「しのみやが落ち込むのを楽しんでおる」

「……さよか」

 

 そんな二人の会話を聞いて、紘乃は密かに夫婦漫才のようだと思っていた。

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