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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
波乱の文化祭
51/126

宣戦布告

「早く中入れよ」

「なんで俺が……」

「いいから! 早く行けっ!」

「うわッ!」


 篠宮は思いきり背中を押されて、よろけながら体育館に入った。ちょうど目の前にいた藤代が怪訝な目で見ている。


「何してんの、お前?」

「いや、ちょっと」

「しばらく練習休むって言ってなかったっけ?」

「あぁ、そうなんだけど」

「何だよ。はっきりしねぇな」

「九条先輩いる?」

「いる訳ねーだろ? あのサボり魔が」

「……だよな」

「訳わかんねー」


 藤代は首を傾げながら一言呟いて、行ってしまう。振り向くと、背中を押した張本人は未だに渡り廊下の柱の影に隠れていた。


「そこにいないで美月も入ればいいのに」

「あたしはいいの! それより九条先輩は?」

「やっぱいないって」

「……そっか」

「なんで?」

「いや、別に」

「…………」

「……九条先輩がいない方がサボれるだろ」

「それじゃ、いなくて良かったな。……ってサボるなよ!」

「ノリ突っ込みきもーい」

「……じゃあ俺、もう行くな」

「え、何で!?」

「何でって……誰かさんのせいで俺は練習に参加出来ないの!」

「ヤダ! まゆが来るまでいてーー!」


 そう泣きそうな顔でしがみつかれる。


(……ホント、コイツって)


「分かったよ、仕方ねぇな――」

「あ、熊谷くん!」

「あん?」


 気が付いたら篠宮の隣には、いたはずの美月がいつの間にかいなくなっている。


「安倍ちゃんも今来たの?」

「うん。今来た」


(嘘つけ)


 そのまま美月は熊谷と話しながら、すんなり体育館に入って行った。


(なんだ、アイツ。熊谷となら入れるんだな……)


「篠宮くん?」

「あ、野々村さん。……と、小澤?」

「篠宮、練習出れるの?」

「いや。ちょっと美月送りに来ただけ」

「え、美月ちゃん来てるの!?」


 真由が体育館を覗くと、即座に美月が走って来て抱きつく。

そんな美月を見つめる真由の笑顔が優しくて、篠宮は思わず笑みが零れた。


「そうやって誰にでも優しくしてると、愛想尽かされるよ?」

「え……?」

「まぁ、その方が俺は好都合だけど」


 小澤は意味深に微笑んで、真由の元へ歩いていく。

 その時、篠宮は真由の頬が赤く染まった気がした。

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