宣戦布告
「早く中入れよ」
「なんで俺が……」
「いいから! 早く行けっ!」
「うわッ!」
篠宮は思いきり背中を押されて、よろけながら体育館に入った。ちょうど目の前にいた藤代が怪訝な目で見ている。
「何してんの、お前?」
「いや、ちょっと」
「しばらく練習休むって言ってなかったっけ?」
「あぁ、そうなんだけど」
「何だよ。はっきりしねぇな」
「九条先輩いる?」
「いる訳ねーだろ? あのサボり魔が」
「……だよな」
「訳わかんねー」
藤代は首を傾げながら一言呟いて、行ってしまう。振り向くと、背中を押した張本人は未だに渡り廊下の柱の影に隠れていた。
「そこにいないで美月も入ればいいのに」
「あたしはいいの! それより九条先輩は?」
「やっぱいないって」
「……そっか」
「なんで?」
「いや、別に」
「…………」
「……九条先輩がいない方がサボれるだろ」
「それじゃ、いなくて良かったな。……ってサボるなよ!」
「ノリ突っ込みきもーい」
「……じゃあ俺、もう行くな」
「え、何で!?」
「何でって……誰かさんのせいで俺は練習に参加出来ないの!」
「ヤダ! まゆが来るまでいてーー!」
そう泣きそうな顔でしがみつかれる。
(……ホント、コイツって)
「分かったよ、仕方ねぇな――」
「あ、熊谷くん!」
「あん?」
気が付いたら篠宮の隣には、いたはずの美月がいつの間にかいなくなっている。
「安倍ちゃんも今来たの?」
「うん。今来た」
(嘘つけ)
そのまま美月は熊谷と話しながら、すんなり体育館に入って行った。
(なんだ、アイツ。熊谷となら入れるんだな……)
「篠宮くん?」
「あ、野々村さん。……と、小澤?」
「篠宮、練習出れるの?」
「いや。ちょっと美月送りに来ただけ」
「え、美月ちゃん来てるの!?」
真由が体育館を覗くと、即座に美月が走って来て抱きつく。
そんな美月を見つめる真由の笑顔が優しくて、篠宮は思わず笑みが零れた。
「そうやって誰にでも優しくしてると、愛想尽かされるよ?」
「え……?」
「まぁ、その方が俺は好都合だけど」
小澤は意味深に微笑んで、真由の元へ歩いていく。
その時、篠宮は真由の頬が赤く染まった気がした。




