46/126
決意の朝
(別に遠くから見ているだけで良かったのに)
(このまま近づき過ぎたら、きっと)
紘乃がスマホのロックを解除する。着信履歴には九条の名前ばかり。
溜息が出る。今までの九条の行動にも、これから自分がやろうとしてる事にも。
(それでも決めたんだ)
九条の番号を選択する指が震えて、紘乃はまだ出来ていない覚悟に胸が苦しくなった。
着信音が鳴り、耳に当てる。もう後戻りは出来ない。
『もしもし?』
たった二回のベルで九条は電話に出た。その声は微かに弾んでいる。
『珍しいね。ひろのから電話なんて』
「あ、あの……」
九条の声を聞いただけで、覚悟が揺らいでしまう。
(こんなんじゃ、ダメだ)
紘乃は大きく深呼吸して、胸を鎮めた。
「話があるんです」
『僕に……? なに?』
「いえ、会って話したいので。放課後、会いに行ってもいいですか?」
『えー? なになに? 別に断らなくても会いに来ていいのに』
「じゃあ放課後に。失礼します」
――プッ、ツーツーツー
しばらく動けずに、息をするのも忘れていた。大きく息を吐き出すと、気持ちまで一緒に流れていくみたいだった。
足元がぐらついて、ちゃんと立っているのかよく分からない。
――ツーツーツー……
鳴ったままの不通音だけが、やけにリアルに耳に響いた。




