自業自得の末路
(自分の不注意が招いた結果とはいえ………何故、こんな事に?)
ここは生徒会室。数々の伝説を残す生徒会――別名:いけめんホスト集団の巣窟――と美月は呼んでいる。
(そんな場所に、凡人のあたしが何故……!?)
――カタカタカタ……
静かな生徒会室に学園の影の支配者と呼ばれる大久保と美月は二人きり。無機質なキーボードを叩く音だけが響いていた。
(い、息が詰まって死にそう……)
「その原稿、そこのパソコンに打ち込め」
「……は、はい」
(はははははじめて喋ったたたたたた)
男子に免疫のない美月の頭の中は大パニック、崩壊寸前であった。
美月はここぞとばかりに、打ち込むパソコンの画面越しにそっと覗き見してみる。大久保の顔には長い前髪がかかって、睨み一つで人を殺しそうなあの目も今は見えない。
「はぁ……」
(こんな間近で初めて大久保様見たけど。……やっぱ溜息が出るほどカッコイイぜ)
「はぁ……」
(相変わらず顔色は悪いけど。……やっぱ溜息が止まらないほどカッコイイぜ)
そんな事を繰り返しながら、美月は何度も意識を手放しそうになった。
「おい」
「はッ……はい?」
画面から視線は外さないまま、話し掛けられる。その間も、大久保のキーボードを叩く手が止まる事はない。
「さっさと終わらせろ。それ終わったら、議事録の打ち込み」
大久保はそう言って、資料の山を顎で指した。
「マ、ジですか……? え、あたしが??」
「他に誰がやるんだよ」
パソコンの画面から視線を外した大久保とバッチリ目が合う。
(ひいいいいいい睨まれた睨まれた睨まれた!!! 早くここから出たいいいい)
大久保に捕まったが最後。問答無用で事は進む。
(と、とりあえず静かに言うこと聞いて終わらせてしまおう……)
そう心に誓う美月であった。
「終わりました!」
「次、それ」
「終わりましたぁ!!」
「次」
「お、終わりました……」
「次」
「…………」
(全然帰れない……)
美月は涙目になりながら、次の仕事を探した。
「次って、どれ……ですか?」
「ソファの横にあんだろ」
「ソファの横ぉ?」
「チッ……」
(怖ひ。今、舌打ちされたよぅ、でも分からないよぅ、だって生徒会じゃないもん!)
「だから、そこに……ッ、」
大久保は立ち上がった瞬間、小さな呻き声と共にそのままグラリと身体が傾いて。
(え……嘘!?)
「ええええええ!! ちょっっ、待っ……うわあああ★○◆#@▽※$%#!?」
気付いた時には、ソファの上で美月は大久保に押し倒された形で埋もれていた。
「お、大久保さまぁ……?」
「…………」
「だだだだだいじょーぶでありますか!?」
「…………」
大久保に応答はなし。完全に意識が飛んでしまっているようだ。
(とりあえず息はしてるし、大丈夫そうだけど……)
「んんん!!」
意識を手放した人の何と重い事か。美月がいくら持ち上げようとしても、彼は少しも動かなかった。
「重いいい」
(……というか、それより! このままじゃあたしの心臓がもちません!!)
(ヤバいヤバいヤバい。この状況、如何に打破すれば……!?)
もう一度持ち上げようと試みたが、それが逆に身体がずり落ちる結果となり、美月の頬に大久保の吐息がかかる。
(……もう無理。心臓が破裂して、死ぬ)




