揺れる
「あれ? 康太は?」
「……知らない」
「何怒ってんの?」
「怒ってないよ……」
「怒ってんじゃん!」
「藤代の馬鹿!」
「はぁ? お前マジ意味わかんねぇ」
その日、篠宮は無断で部活を休んだ。
「今日のまゆ機嫌わりぃーから早く帰ろうぜー」
「ちょっと、司!」
「俺、彼女待たしてっから。お先~」
(……もう藤代ムカつく!!)
そのイライラの大半が自分のせいだと気づいていない藤代に、真由のイライラは増幅するばかりだった。
でも残りのイライラは自分自身に対してで。
(気づくと篠宮くんの姿を探してる自分も、何も関係ない生徒会のみんなに気を使わせている自分も。全部イライラする)
皆が帰った体育館。このだだっ広い空間に独りになった途端、真由は無性に哀しくなってきた。
「あー……ダメだ、あたし」
もう全てが嫌になって、モップを投げ出して体育館の真ん中に寝転ぶ。
(さっきの……)
真由の頭の中では、美月の腕を掴んだ篠宮の姿がずっとぐるぐるしていた。その時の篠宮は何だかとても必死そうに見えた。
(やっぱり……美月ちゃんの事、好きなのかな?)
そんな事ばかりが、浮かんでは消え、浮かんでは消え、考える度にじわりと涙が滲んだ。
「何がダメなの?」
「え……ッ!?」
頭の上から声がして。
「なんだ、小澤くんか……」
「何? 俺じゃ不満?」
真由の顔を覗き込んで、にっこり笑った。
「そんなんじゃないよ! ビックリした。帰ったんじゃなかったの?」
「掃除、一人じゃ大変でしょ? 手伝うよ」
そう言うと小澤は転がっていたモップで掃除し始めた。
「え、あ、ありがとう!」
真由が慌てて起き上がると、眼鏡の奥の優しい眼差しと目が合って、小澤がクスリと笑う。
――……ドキンッ。
(……あれ? 今、何だか胸が?)
「マネージャー、こっち終わったよ」
「あたしも今終わったぁー!」
「じゃあ、帰ろ」
「……う、うん」
(……どうしよう。ドキドキが、止まらない)




