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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
誘惑の闇
35/126

揺れる

「あれ? 康太は?」

「……知らない」

「何怒ってんの?」

「怒ってないよ……」

「怒ってんじゃん!」

「藤代の馬鹿!」

「はぁ? お前マジ意味わかんねぇ」


 その日、篠宮は無断で部活を休んだ。


「今日のまゆ機嫌わりぃーから早く帰ろうぜー」

「ちょっと、司!」

「俺、彼女待たしてっから。お先~」


(……もう藤代ムカつく!!)


 そのイライラの大半が自分のせいだと気づいていない藤代に、真由のイライラは増幅するばかりだった。

 でも残りのイライラは自分自身に対してで。


(気づくと篠宮くんの姿を探してる自分も、何も関係ない生徒会のみんなに気を使わせている自分も。全部イライラする)


 皆が帰った体育館。このだだっ広い空間に独りになった途端、真由は無性に哀しくなってきた。


「あー……ダメだ、あたし」


 もう全てが嫌になって、モップを投げ出して体育館の真ん中に寝転ぶ。


(さっきの……)


 真由の頭の中では、美月の腕を掴んだ篠宮の姿がずっとぐるぐるしていた。その時の篠宮は何だかとても必死そうに見えた。


(やっぱり……美月ちゃんの事、好きなのかな?)


 そんな事ばかりが、浮かんでは消え、浮かんでは消え、考える度にじわりと涙が滲んだ。


「何がダメなの?」

「え……ッ!?」


 頭の上から声がして。


「なんだ、小澤くんか……」

「何? 俺じゃ不満?」


 真由の顔を覗き込んで、にっこり笑った。


「そんなんじゃないよ! ビックリした。帰ったんじゃなかったの?」

「掃除、一人じゃ大変でしょ? 手伝うよ」


 そう言うと小澤は転がっていたモップで掃除し始めた。


「え、あ、ありがとう!」


 真由が慌てて起き上がると、眼鏡の奥の優しい眼差しと目が合って、小澤がクスリと笑う。


――……ドキンッ。


(……あれ? 今、何だか胸が?)


「マネージャー、こっち終わったよ」

「あたしも今終わったぁー!」

「じゃあ、帰ろ」

「……う、うん」


(……どうしよう。ドキドキが、止まらない)

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