次の日の朝
昨日は色んな事があり過ぎた。でも真由にとって結局一番ビックリした事は美月の妄想が漫画になっていたという事だった。
「もう! 漫画とか描いたら見せてって前にも言ったじゃん!」
美月は時々、妄想を伝えたい時など絵を描いて見せてくれる事があった。真由は美月の描く絵が好きだった。だから『描いた時は見せてね』と約束していたのである。
「え、言ってなかったっけ?」
「言ってないよ!!」
「アハハ……ごめんごめん」
『うっかり忘れてたよー』と笑いつつ、実は三巻まで出ていたりするらしい。いつも思うが、うっかりにも程がある。
「おはよう」
「おはよーしのみやくん」
「はい、ヲタみやが来ましたよー」
「もう……ホント、お願いやめて美月」
「そうだよ。美月ちゃん」
「コイツ同人誌買ってんだよ!? この顔で」
「顔関係ないし。その作者はどこのどいつだよ……」
「そうだよ! 美月ちゃんのお話が面白いからだよ!」
「……どうだかな」
美月はフンと鼻で笑って、篠宮から視線を外す。するとそのまま固まった。
「あ……」
「え? どうしたの?」
美月の視線の先。教室の入り口には藤代、と……。
「嘘!? 新しい彼女!?」
「あーそういえば、最近付き合い始めたとか自慢気に言ってたわ」
(はあ!? 前の後輩とはいつ別れたの!? 次から次へ……あの女たらしッ!!)
少し潔癖な真由には、藤代の行動はどうにも理解しがたいものだった。
「あの子、確か……隣のクラスの、」
「紘乃の友達だね」
それは隣のクラスの松嶋紗弥加だった。いるだけで周りが明るくなるような、笑うと目のなくなる可愛らしい女の子だ。紘乃が売っている藤代の写真の常連で、それを通じて仲良くなったという話を美月は聞いた事があった。
藤代は教室の入り口で、いつまでもその彼女の手を離さずにイチャイチャしている。
(登校してくるみんなの邪魔だっつーの!!)
真由はハッとして、美月を見る。
(もう! 藤代の馬鹿!!)
「可愛い彼女さんやね」
美月はキラキラと目を輝かせて、その様子を見ている。
「ちょっと美月ちゃん! もうなんでいっつもそうなの!?」
「……何が?」
「普通ああいうの見たら嫌じゃない!? 嫉妬とかないの?」
「嫉妬……? あんな可愛い彼女連れて歩けていいな、みたいな?」
「逆だよ!!」
(なんでいつもこうなんだ……)
真由の心はいつも複雑だった。
大切な友達の好きな人は、自分が大嫌いな男。それでも美月が幸せなら、その恋を応援しようと思っている。
しかし美月本人には何だかいつもその気がない。
(そのくせ名前呼ばれたくらいで泣いちゃうし、昨日だって気絶するし。あたしには美月ちゃんが何考えてるのかよく分からないよ)
もう一度美月を見ると、目をハートマークにして藤代とその彼女を見つめていた。そんな美月の姿に、真由は人知れず溜息をついた。




