藤代的考察
「やっぱり九条先輩は純血ですよね~」
「そこも妄想済み?」
「格の違いですよね、分かります!」
美月は弾んだ声で話し続ける。
言霊――言葉の持つ魂を信じている美月は、叶ったらいいなと思う事は何でも口にする事にしている。
そして空想しがちな彼女は、様々な妄想をして毎日楽しく過ごしている。それを時々真由や紘乃に話すのだが、まるで真実のように話すので現実だか妄想だか分からなくなる時があると言う。しかしその数日後に本当に話していた事が起こったりして、二人を驚かせる事が度々あるそうだ。
藤代は彼女がこんなに話す所を初めて見た。女性なら見境なく声を掛ける彼だが、会話をした記憶などほとんどない。
今まで美月のイメージは、藤代の一番苦手な勉強の出来そうな優等生タイプ。真由や篠宮とは仲が良かったので、何となく印象には残っていた。
しかし篠宮は彼女を、平成のジャイアンと呼ぶ。
(それどんな女だよ)
そして篠宮を何故かヲタクだと思い込んでるらしい。篠宮のフィギュア収集癖や戦隊モノ好きを知っている藤代にはあながち間違ってないと思ったが、篠宮がひた隠しにしているそれを美月が知っているとは到底思えない。
その上自分達が鬼と知っても全然動じない――というか、むしろ受け入れている。
(不思議な女)
「つまり、他のみんなはハーフなんだ?」
「そういう事」
「ププ……しのみやダッサ」
「え? なんで俺だけ? みんな一緒だかんな?」
「例えるならみんなは人魚だけど、しのみやは半魚人みたいな?」
「ぶっ!!!」
「やっぱり人間部分に問題があるんですかね?」
「おい、司笑うな! 美月も真顔で悩むな!」
(半魚人の康太とかマジウケるんですけど! あべ最高)
「……ッ」
一瞬。
美月と目が合ったら、不自然に逸らされた。
(……なんだ? そういえば、この間の図書室でも挙動不審だったような?)
「それより。お前の連れてるソイツは? 何者?」
篠宮が視線だけをカイトに向けて聞く。
普段学園の中では気づかなかったが、確かにさっき人間ではない違和感を篠宮は感じていた。だからと言って同類でも、ない。
「カイトはカイトだもん」
美月はカイトを守るようにぎゅうっと抱き締めた。
「みづき先輩。言ってもいいよ。別に」
「カイト、でも」
「この人達なら、きっと大丈夫だよ」
カイトは静かに抱き返すと、美月は安心したように笑った。
「ええ!? 人狼!?」
「そうだよ。満月の夜は狼になっちゃうんだよねー」
「ねー」
「ハーフ仲間だ! お仲間増えたよカイト!」
「何それ」
「つかなんでみづきちゃん、カイちゃんのそんな事知ってんの!?」
「あー、それは……俺が狼の時に暴走して襲っちゃって」
「アハハ! あの時も大変だったね」
「美月、多分それ笑い事じゃないから……」
篠宮の冷静な突っ込みも笑い飛ばして。
(ホント……変な奴)
この日、藤代の中で『安倍美月=変な奴』と認識されたのだった。




