戒告
屍食鬼相手に素手で戦うなんて、あまりにも不利。
「先輩!!」
声と同時に美月に木刀が投げ渡された。
――ガキーーン!!
美月は木刀を斜めに振り上げ、化物の攻撃を確実に捕らえる。
『何故邪魔ヲスル? 人間ノクセニ! オ前、何者ダ!?』
「あたし?」
ニヤリと笑って相手の力を上手く往なすと、追い討ちのハイキック。頭に血が昇って周りが見えなくなってるソイツは豪快にぶっ飛んだ。
「知らざぁ言って聞かせやしょう!
愛を貫き平和を守る!
雪花学園合気道部主将!
安倍美月たぁ、あたしの事だ!」
「え、白浪の名乗り……?」
「篠宮くん知ってるの!?」
「いや……知ってる、つーか」
(そういや、コイツ古典とか歌舞伎とか好きだったな……)
「フッ……決まったな」
「先輩カッコ良かったッス」
「でしょでしょ~! カイトのアシストも完璧だったぞ」
美月がカイトと呼ぶ少年に篠宮は見覚えがあった。
(確か、合気道部に今年入った一年坊主)
「先輩、木刀使うの上手くなりましたね」
「ホント!? YouTube見て練習した甲斐あったね!」
(えーと……YouTube? 美月が何か言う度にどんどん分からなくなる)
『フザケルナァァァ!!!』
美月のふざけた態度――本人はふざけているつもりは毛頭ない――が、ついに屍食鬼の逆鱗に触れてしまった。
「気をつけて! 彼らは美月ちゃんの血の匂いに集まって来たんだ!」
「熊谷!?」
熊谷の言った通り、美月の押さえる右腕には一筋の血が滴り落ちている。熊谷は美月に駆け寄った。
「お前、その怪我!?」
「傷口開いちゃったみたい……アハハ」
「アハハじゃないよ! 美月ちゃん!!」
「すぐ無茶するんだから……」
「すまんすまん」
熊谷はすぐに美月の傷口に触れ、応急措置をする。九条のように完治はさせられないが、混血も止血くらいは出来る。
傷口が少しずつ塞がっていくのを、美月は不思議そうな顔で見ていた。
「大久保! 大丈夫?」
「あぁ、俺は……」
「全然大丈夫そうに見えないんですけどー。って、何巻き込まれちゃってんの? お前ら」
「今更来て何言ってんのよ藤代の馬鹿!!」
「はぁ? なんだよ、せっかく助けに来てやったのに」
いつの間にか周りには生徒会の面々。
(まぁ、これだけ血の匂いが充満してりゃ当たり前、か。でも助かった……)
ホッとしたのも、束の間。ビリリと痛いくらいの緊張が走る。
「僕のテリトリーで、随分暴れてくれたみたいだね?」
頬を刺すような、冷たい風がふいた。




