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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
誘惑の闇
21/126

戦闘

「りゅうッ……いやああああ!!!」

「大久保ッ!!!」


 篠宮はスライディングで屍食鬼の足元に入り込むと、下段から蹴り上げ、相手に出来た一瞬の隙を見逃さずに大久保を取り返す。

 同時に傷口から気を送り込んだ。


「りゅうちゃん! しっかりして! りゅうちゃん!!」

「……騒ぐな。うっせーよ、馬鹿」


 大久保は身体を起こすと、溜息まじりに呟いた。


「人が心配してんのに馬鹿って何よ!」

「俺は不老不死の鬼だ。この程度じゃ死なない」


 その言葉を通りに、みるみる大久保の傷口が塞がっていく。


「てめぇも余計な事してんじゃねーよ」


 大久保は篠宮に悪態をついて睨んだ。その睨みにいつもの覇気はないが……。


(これだけ悪態つけりゃとりあえずは大丈夫、か)


「悪い、野々村さん。大久保頼む」

「う、うん」

「おい! 待て! 篠宮!」


 大久保の止める声も聞かずに、篠宮は屍食鬼の前に立ちはだかった。


(しばらく大久保は戦えない。でも一対一なら、互角くらいには戦えるかもしれない……)


「あれ……何なの?」

「通称、屍食鬼。純血の成れの果てだよ」

「……純血って、九条先輩みたいな?」

「話は後だ。余裕こいてもいられねーみたいだぜ?」


 自嘲気味に笑う大久保の視線の先に、黒い影。


「何ッ!? 屍食鬼がもう一体だとッ!!?」


『女ノ匂イ…』

『ソノ女食ワセロ…』


 血の匂いに誘われて。


(奴等の狙いは野々村さん……ッ!?)


 屍食鬼と呼ばれる化物は篠宮達など視界に入っていない。真っ直ぐ真由の元へ歩いていく。


「彼女に近づくな!!」


『邪魔ダ……ドケ』


「ぐはぁっ!!!」

「篠宮くんッ!!」


 ものすごい怪力で弾き飛ばされる。塀に背中を打ち付けて、息が出来ない。


(しまった……頭がクラクラする)


「……嫌、来ないで」


 弱々しい真由の声に、篠宮は一瞬で意識が戻った。背後には、もう一体が近づいている。

 大久保が立ち上がろうとしたが、まだ気の流れは戻らずに、ガクンと膝から力尽きた。


(……このままじゃ、2人とも殺られるッ!!)


「やめろおおおお!!!」


 伸ばした手は届かない。


「クソ……ッ!!」



(俺には、誰も救えない……?)





「諦めるのか?」


(……え?)


 その声は、風に乗って。静かに耳に届いた。


「諦めたら、そこで試合終了だよ?」


(……あ、安西先生!!?(@スラムダンク))


 スラムダンクのこのセリフが好きで、しょっちゅう使っている奴を篠宮は知っている。

 その声の主を探そうとした瞬間。


「伏せろおおおお!!!」


 その声に条件反射で伏せた篠宮の頭上を、突風がふいた。

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