戦闘
「りゅうッ……いやああああ!!!」
「大久保ッ!!!」
篠宮はスライディングで屍食鬼の足元に入り込むと、下段から蹴り上げ、相手に出来た一瞬の隙を見逃さずに大久保を取り返す。
同時に傷口から気を送り込んだ。
「りゅうちゃん! しっかりして! りゅうちゃん!!」
「……騒ぐな。うっせーよ、馬鹿」
大久保は身体を起こすと、溜息まじりに呟いた。
「人が心配してんのに馬鹿って何よ!」
「俺は不老不死の鬼だ。この程度じゃ死なない」
その言葉を通りに、みるみる大久保の傷口が塞がっていく。
「てめぇも余計な事してんじゃねーよ」
大久保は篠宮に悪態をついて睨んだ。その睨みにいつもの覇気はないが……。
(これだけ悪態つけりゃとりあえずは大丈夫、か)
「悪い、野々村さん。大久保頼む」
「う、うん」
「おい! 待て! 篠宮!」
大久保の止める声も聞かずに、篠宮は屍食鬼の前に立ちはだかった。
(しばらく大久保は戦えない。でも一対一なら、互角くらいには戦えるかもしれない……)
「あれ……何なの?」
「通称、屍食鬼。純血の成れの果てだよ」
「……純血って、九条先輩みたいな?」
「話は後だ。余裕こいてもいられねーみたいだぜ?」
自嘲気味に笑う大久保の視線の先に、黒い影。
「何ッ!? 屍食鬼がもう一体だとッ!!?」
『女ノ匂イ…』
『ソノ女食ワセロ…』
血の匂いに誘われて。
(奴等の狙いは野々村さん……ッ!?)
屍食鬼と呼ばれる化物は篠宮達など視界に入っていない。真っ直ぐ真由の元へ歩いていく。
「彼女に近づくな!!」
『邪魔ダ……ドケ』
「ぐはぁっ!!!」
「篠宮くんッ!!」
ものすごい怪力で弾き飛ばされる。塀に背中を打ち付けて、息が出来ない。
(しまった……頭がクラクラする)
「……嫌、来ないで」
弱々しい真由の声に、篠宮は一瞬で意識が戻った。背後には、もう一体が近づいている。
大久保が立ち上がろうとしたが、まだ気の流れは戻らずに、ガクンと膝から力尽きた。
(……このままじゃ、2人とも殺られるッ!!)
「やめろおおおお!!!」
伸ばした手は届かない。
「クソ……ッ!!」
(俺には、誰も救えない……?)
「諦めるのか?」
(……え?)
その声は、風に乗って。静かに耳に届いた。
「諦めたら、そこで試合終了だよ?」
(……あ、安西先生!!?(@スラムダンク))
スラムダンクのこのセリフが好きで、しょっちゅう使っている奴を篠宮は知っている。
その声の主を探そうとした瞬間。
「伏せろおおおお!!!」
その声に条件反射で伏せた篠宮の頭上を、突風がふいた。




