願い事
「まゆー。元気ないー?」
「んー、大丈夫だよー」
真由はぼーっと考え事をしてたら、いつの間にか相原に顔を覗き込まれていた。あまりに心配そうな顔をするから、鬱々と悩んでいた真由にも思わず笑みが零れる。
相原はチャラチャラした見た目と女好きなところは藤代と変わらないのだが、こうして女子を気にかけ優しく接してくれるので真由も気を許せる相手であった。
「まゆ、悩みあるなら、この相原さんが聞いてあげるよ?」
「相原さんやっさし~」
「お前ら何してる?」
「あ……」
「げ、おおくぼ……」
相原は大久保の顔を見るなり、真由からサッと距離を取る。
「相原。お前はあんなのにまで声掛けるのか?」
「あんなのって何さ! 大久保ムカつくうう」
真由は最近気付いたのだが、大久保は近づきがたい雰囲気を醸し出してはいるだけで、別に怖くない。
「ねぇ、りゅうちゃん」
「今度その呼び方したら殺す」
「いいじゃん別にー」
「ねー? 可愛いじゃん、りゅーちゃーん」
「てめぇらふざけてねーで仕事しろ!!」
「りゅーちゃんこわーい」
相原はそのまま小澤の元へ走って逃げてしまった。
「お前も、さっさと行け」
「あ、あのさ……」
「あ?」
「あたし、りゅうちゃんにお願いあるんだけど……聞いてくれる?」
***
――コンコン。
生徒会室にノックをする音が小さく響く。九条は居留守を使おうと思っていたが、次の瞬間そのドアは勝手に開いた。風に乗って鼻をかすめる匂いで、それが紘乃だと分かる。
「失礼します」
「珍しいね、君の方から来てくれるなんて」
相手が紘乃だと分かった九条は、すぐに彼女を生徒会室に招き入れて後ろから抱き締めた。すると紘乃は少し身動ぐ。
紘乃の緩やかなウェーブを纏った長い髪がふわりと鼻先に触れて、くすぐったい。
「ひろの……」
押し寄せる軽い目眩に酔いしれる。
「九条先輩」
「ん?」
名前を呼ぶと、紘乃は絡みつく腕を外し、身体を向き直した。
「……お願いがあるんです」
その声は胸に秘めた覚悟をそっと宿していた。




