壊れる偽り
「はあ!? 篠宮と一緒に帰ったあああ!?」
昼休み。定番の屋上で、美月は案の定ご立腹であった。
美月曰く。朝から様子がおかしかったらしい真由は、半ば強制的に美月と紘乃に連行され、ついに昨日の事を喋ってしまった。
「まゆりん、良かったねぇ!」
紘乃は、そう素直に喜ぶ。しかし。
「…………」
美月はじーっと真由を見つめて黙り込む。その沈黙がやけに怖い。
「違うの! 最近この辺物騒だからって……帰り遅くなっちゃったから!」
「物騒、ねぇ?」
全然信用していない顔で美月は視線を逸らした。
「あー、また通り魔出たって言うしねぇ。怖いよね」
「うん! だから、その、ね? 篠宮くん優しいから! 送ってくれただけだから!」
紘乃が投げてくれた話題に真由は慌てて飛びついた。
しかし最近この辺の通学路で頻繁に、女子学生を狙った通り魔が出没しているのは事実だ。今学校で一番の話題になっている。
結局昨日は、真由にとって通り魔なんかより事件だった訳だが。
「もうそんな遅くなるなら辞めちまえ!!」
「……無理、だよ」
「なんで!?」
「……それは」
(辞めた方が我が身に危険が迫るからです! ……なんて言えない)
「まただんまり?」
美月はものすごく悲しそうな顔で、ため息をつきながら真由のお弁当からミートボールを拾って食べた。
「え、あ……? あー! あたしのミートボール」
「だんまりの罰じゃもーん」
真由は嘆きながら、美味しそうに頬張る美月を見つめる。二人の姿を見て紘乃は微笑んだ。
その時、どこからか音楽が流れてくる。
「紘乃のスマホ鳴ってるよー」
「あ、うん」
紘乃はそのままパタパタと屋上の入口の影へ行ってしまう。番号を交換する代わりに、全校放送は止めてもらったと聞いていた真由は、それが九条からの電話だとすぐに直感した。
「……男だな」
「え!?」
美月は紘乃を見つめ、目を細めてぼそりと呟く。真由は思わず声が裏返った。
最近美月の推理が冴え渡りすぎて怖い。
「だって最近紘乃一段と綺麗になったと思わない? 怪しいと思ったんだよ」
「そ、そうかな……?」
「でも今は別に好きな人はいないって言ってたよね? 求愛されてほだされたかな?」
美月は冗談みたいに笑った。不意に九条の顔が浮かぶ。
「うーん……そんな人じゃないと思うけど?」
確かに紘乃に懐いている感はあるが、求愛ってキャラではない。
「…………」
美月が急に黙り込む。
「美月ちゃん?」
「……まゆは、知ってるの?」
「え?」
「紘乃の彼氏。どんな人か、聞いてるんだ」
(しまった!)
そう思った時にはもう遅くて。
「そっか。知らないの、またあたしだけか……」
「違うの! 美月ちゃん! これには訳が!」
「いいよ」
「ねぇ、美月ちゃん……」
「どうせまた、言えないんでしょ?」
美月が泣きそうな顔で笑う。そんな美月の姿を見るのは初めてだった。




