恋灯
真由にとって男子と話すのにこんなに緊張したのは初めてだった。
「でね、美月ちゃんったらヒドイんだよ!」
「うん」
緊張のしすぎで話が止まらない。いざ二人きりになると何を話していいか分からなかった真由は、とりあえず共通の話題とひたすら美月の話題を話していた。
「何? 美月そんな事言ったの?」
「うん」
「全くしょうがねーなアイツは」
篠宮の普段仲のいい友達にしか見せないような砕けた表情を見て、真由は胸の奥がきゅんとした。
どんどん胸の鼓動が速くなる。どうしてこんなに緊張するのだろう。全くと言っていい程、他の男子と話せない美月が何故篠宮とは普通に話せるのか不思議に思う。
「野々村さん……?」
「あ、ううん! 何でもない!」
急に話が止まって、篠宮が不思議そうな顔している。何か話さなくては、と真由は必死で話題を探した。
「それでね、藤代が」
やっと出てきたのは、何故か藤代の名前。あんな奴に助けられるのは癪だったが、話題の見つかった真由は心から安堵した。
「いつもそうやってあたしの事からかうんだよ?」
「……うん」
(あれ?)
その時、少し悲しそうな顔をした篠宮に、真由は違和感を覚えた。
それからは何を話したのか、あまり覚えてない。真由は美月が男子と話せない気持ちが少し分かった気がする。気がついたらもう家の前だった。
「今日は送ってくれてありがとう。じゃあ、また明日……」
「あのさ」
「ん?」
「アイツらの話もいいけどさ、」
不意に篠宮が真剣な目で、真由を見つめて。
「今度は野々村さんの話も聞かせてよ……」
困ったように微笑まれる。
(なにこれ。身体が熱い……)
篠宮が手を振って、歩き出す。
――ズキン。
その背中を見つめる真由の胸が叫ぶみたいに、ひどく痛んだ。




