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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
血の月
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予感

「ねぇ、真由。今度の土日空いてる?」

「え? 空いてるけど……?」


 小澤が急に真面目な顔になって、口を開く。


(土日って何?)


「付き合って欲しい所があるんだ」


(ま、まさかのお泊まり……?)


 真由の頭の中を様々な疑問と期待が駆け巡る。

 付き合って二ヶ月。初めての彼氏は、慣れた手付きでグイグイと引っ張って、深みに嵌っていく。


「ねぇ、聞いてる?」

「う、うん! いいよ、もちろん!」

「そう? 良かった」


 満足する返事を聞いて微笑む小澤に、真由の鼓動は高鳴るばかりだった。



 ***



「……って、なんでコイツらがいるのよーーーっ!?」

「それはこっちのセリフ。小澤の新しい彼女ってコイツ? マジ最悪」

「むきーーー!」


 藤代の言葉に今にも飛び掛かりそうな勢いの真由を、篠宮が必死で抑える。

 小澤の指定した待ち合わせ場所の校門には、何故か生徒会の面々(とその彼女)も集められ、これから皆が乗るらしいバスも停められていた。


「コラ! 司!」


 篠宮が咎めるのを無視して藤代はさっさと紗弥加の元へ行き、もう二人の世界に入り込んでいる。腰に回された腕に紗弥加は頬を紅潮させた。そしてそれはますます真由の神経を逆撫でした。 


(あんにゃろ!)


「なんか、悪いな? アイツあんな言い方しか出来なくて……」

「いや、篠宮くんは悪くないでしょ。それに勝手に期待したあたしが悪いの」

「期待?」

「あっ、ううん! こっちの話」

「ふーん」


 篠宮は納得しないような顔で、でもそれ以上は何も聞かずに荷物をバスまで運んでくれる。今も昔も変わらぬその優しさに、真由は感謝した。

 そして一人になった真由は小さく溜息をついた。


「ごめんね?」


 後ろから小澤の申し訳なさそうな声が聞こえて、振り向く。

 

「もう、なんで小澤くんが謝るの~?」


 真由は自分の残念がっている気持ちが悟られないように、笑いながら慌てて目を逸らした。

 そんな真由に小澤の唇がスッと近付く。


「でも夜には二人きりになれるから」


 そう耳元で囁かれ、微かに笑う気配がして髪の毛に吐息が触れた。 


(どうしよう……身体中が熱い)


 真由は目を瞑って頷く。それが今出来る精一杯の反応だった。



「みんな揃ったかな~?」


 当たり前のように紘乃をぴったりと横に連れた九条が現れると、その間の抜けた声に真由は現実に引き戻された。


「まだ大久保が来てません」

「もう来ないんじゃね? アイツがごねるのいつもの事だし」

「いや、来るよ。大久保は絶対来る」


 確信に満ちた目。そして『ほらね?』と笑う。


「グズグズすんな! さっさと歩け!」

「うわーーん!」

「大久保! ……と、美月!? お前なんでここに!?」

「あの、お気楽生徒会長に謀られた……」


 美月が睨むのを気にも留めずに、九条はいち早くバスに乗り込む。


(大久保が美月を……? まさか、な?)


 篠宮はまず大久保が来た事に驚いていた。篠宮だけではない。他の生徒会も、少なからず不思議な目を向けている。

 しかしそれ以上に大久保と一緒にやって来た美月に疑問を抱いていた。


(俺が頼もうとしても、話さえも聞いてくれなかったのに!)


 それでもこの場にいるのは本意ではないらしく、美月は苦手な生徒会を目の前に顔面蒼白で立ち尽くしている。


(大丈夫かよ……) 


「何してるの? みんなも早く!」


 九条がなかなかバスに乗ってこない皆に業を煮やして、バスの窓を開けて手を振る。


「なんか楽しそうだね、あの人……」


 突っ込む気力もない美月がぽつりと呟いた。


「まぁ、愚痴は後でたっぷり聞くから」


 篠宮に肩を叩かれ、美月は決心して重い足取りを無理矢理にバスへと向ける。

 そしてそれぞれの想いを抱いて乗り込んだバスは、静かに走り出した。  

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