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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
蠢く影
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不機嫌な人達

「だから行かねーって言ってんだろ!」


 昼休みの生徒会室に、怒号が響いた。


「まぁ、そんなカリカリすんなって」


 いつも通りに九条がヘラリと笑って往なす。しかし今日ばかりは、大久保の怒りは収まらずにその笑顔を思い切り睨みつけた。


「今日は随分ご機嫌ななめだね?」

「気に入らねーんだよ、ジジイも。その話をする時のお前の顔も!」


 大久保は吐き捨てるように言うと、舌打ちを残して生徒会室を後にした。強く扉を閉めたせいで、壁に掛けてあった初代生徒会長の写真が音を立てて落ちる。


「ったく……」


 九条は溜め息をついて、その写真を拾い上げた。 


「全く困ったものだねぇ? あのわがまま息子には」


 一人、そう呟き、片眉を下げて笑った。



 ***



 篠宮は悩んでいた。

 どうしても美月に頼みたい事があるのだ。

 今日一日その話を切り出す瞬間を狙っていた。しかしなかなかタイミングを掴めずに、ついに放課後になってしまった。

 横目で一瞥すると、机に突っ伏して寝ていた美月がちょうど目を覚ました所だった。


(今しかない!)


 篠宮は意を決して口を開いた。


「あ、あのさ……美月――」

「断る」

「いや、俺まだ何も言ってないんだけど」

「どうせ生徒会関連だろ?」

「なっ……!」


(なんでバレた?)


 こういう時の美月は恐ろしく勘がいい。

 篠宮はもう一度仕切りなおして話を進めようとしたが、その間に美月は帰り仕度を済ませ教室を出て行こうとする。

 篠宮は慌ててその背中を追い掛けた。

 

「なぁ、お願いだから話だけでも聞いて!」

「あたしは忙しいの! お前の頼みなんか聞いてる暇はない!」

「また部活サボり? いいのかよ、主将が休んでばっかで」

「仕方ないだろ。おたくのおさが首を縦に振らないんだから。そんな事言うならお前も少しは助太刀すけだちしろっての」

「そしたら頼み聞いてく――」

「却下」

「却下すんのはえーよ」

「とにかく今は無理。早く行かないと閉め出すんだよ、あの鬼畜眼鏡」


(鬼畜眼鏡って……)


 篠宮はつい先日珍しく凄い剣幕で、九条に詰め寄る小澤の姿を思い出し苦笑した。


 最近、美月には通い詰めている場所があった。

 それは小澤が施設長を務めている研究施設だ。表向きには薬品開発の研究施設という事になってはいるが、実際は鬼の生態や屍食鬼に関する研究や造血剤の開発などを行っている。

 そんな場所に、何故美月が通い詰めているかというと……。


「朝日は元気?」

「手に負えないくらいやんちゃ。体調安定しないとか絶対嘘だし」


 行く度小澤に嫌みを言われている美月は、それを思い出し苦虫を噛み潰したような顔をした。小澤が美月に鬼畜眼鏡などと呼ばれる所以もそこにある。

 『朝日』というのは、文化祭の時屍食鬼となって乱入し捕獲された純血鬼の少年だ。いつの間にか美月がそう名付け、呼んでいた。

 朝日も夕樹同様、美月は自分が引き取ると言って聞かなかったが、それにはさすがの九条も反対し、体調が不安定である事を理由に、今も研究所に収容されている。

 だが、その事に納得のいかない美月は(紘乃を使って)九条を問い詰め、研究所の場所を突き止め、毎日通い詰めるまでになったのだ。


「朝日も早く学校通えるようになるといいな?」

「そのために今頑張ってんだろ~」


 そう言って下駄箱で靴を履き替えた途端走り出す。


「美月!」

「あん?」


 行こうとした矢先呼び止められて、美月は不機嫌そうに振り向いた。


「あんま無理すんなよ?」

「お前は人の心配より自分の心配したら?」

「あ、あぁ……」 

「じゃーな」


 再び走り出した後ろ姿を見て、これ以上頼んでも無駄だと察した篠宮は盛大に溜め息をついた。


「あー……マジでどうしよ」

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