行カナイデ
サボりの定番と言えば、普通は屋上。でも、日の光を好まない鬼達のサボり場所はだいたい決まっている。
「……大久保?」
生徒会室のソファには既に先客。大久保は今日も具合の悪そうな顔色で、ソファに横になっていた。
「熊谷、か?」
目を瞑ったまま大久保が呟く。
「ごめん! 起こした?」
「いや、起きてた」
大久保はどんな時も隙を見せたりしない。だからきっとあんな目付き悪いんだ、と熊谷は思う。
(そういえば、こんなに永く一緒にいるのに大久保が寝てるトコなんて、見た事ないや……)
辛くても助けを求めたりしない。熊谷にはそれが時々とても悲しかった。
「具合悪い?」
「あー、まぁ……」
「やまとちゃんに氣分けてもらってないの?」
「めんどくせー」
「もう、大久保ったら!」
大久保は混血種の中でも特殊で。人間の生命エネルギーを受け入れられない体質だと、熊谷は昔聞いた事がある。女嫌いなんて言われているのは、それが原因で。女子に触っただけで嘔吐してしまう。
だからいつも純血種である九条の側にいて、九条から氣を分けてもらっている。だがそれも嫌がって避けているみたいだった。
時々熊谷は不安に襲われるのだ。このまま大久保が消えていなくなってしまうのではないか、と。
「……熊谷?」
熊谷は未だぐったりと横たわったままの大久保のおでこに手を当てて、目を閉じた。
「やまとちゃんみたいに上手く出来ないけど……」
こんな姿の大久保を見てるのは、たまらなく辛い。
「もう十分だ、熊谷」
大久保は熊谷の手を握って。
「ありがとう」
そう弱々しく笑った。
大久保に少し顔色が戻ったようだった。ホッとして力の抜けた熊谷は、大久保に倒れ込む。
優しい大久保はそっと支えてくれた。
「バカ野郎。力の使いすぎだ!」
「いいんだ。大久保が笑ってくれるなら……」
「俺なんかほっとけって」
「ヤダよ」
「……ッ」
大久保は一瞬躊躇ったが、怒るのを諦めたみたいだった。熊谷が一度言ったらきかない事を、大久保はよく分かっていたから。
「好きなんだ、大久保」
「あぁ。知ってるよ」
熊谷が抱き締める腕に力を込めると、大久保は彼の頭を優しく撫でた。




