第三番 Intermezzo
退屈。
何をしていてもつまらない。
「ねぇ司〜彼女忙しいんでしょ?」
女ってのはどこからそんな情報集めてくんだか知らねーけど……正直ウザい。
「うちらと遊ぼうよ〜」
こんな奴らと遊ぶ気にもならない。
黙ったまま一睨み効かせると、群がる女達は何か言いながら去っていった。
(あー! イライラする!)
それもこれも紗弥加のせいだ。
夏休みに会えないとか意味わかんねー。
「あ……」
気付いたら音楽室の目の前にいる俺。
(ありえねー……)
会いに来た?
この俺が?
女なんて遊びでしか付き合った事ない。
いつだって向こうからやって来た。
女は栄養補給。
それだって楽しい方がいいに決まってる。
ただそれだけだ。
思わず音楽室の紗弥加を見てしまう。防音完備の音楽室。音は聞こえない。
サックスを吹きながら、駆と目配せをして笑う。
そして同じ楽譜を二人で覗き込んで一言二言交わすと、駆が何かを楽譜に書き込んでいく。
その姿を紗弥加は明らかにうっとりした顔で見つめていた。
それは俺の知らない紗弥加だった。
(なんだこれ……)
入り込めない、二人だけの世界。見ていられなくなって踵を返す。
「……司?」
ゆっくりとドアが開いて、紗弥加の香りが鼻を掠めた。
「つかさあああ!」
「うおッ!?」
後ろからいきなり飛びつかれて、前につんのめる。
「会いたかったよーっ!」
「痛いっ、痛いって」
向き直ってもなお、しがみついてくる紗弥加が愛おしくて、頭を撫でてやる。
見上げた目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「何泣いてんだよ」
「ずっと会いたかったのに、我慢してたのに、もう!」
元々体温の高い紗弥加の熱が伝わって、溶けていく。
気付くと、いつの間にかイライラはおさまっていた。
「そうだ! これから一回流すの、司聴いてかない?」
腕の中で、キラキラした笑顔でそう言う。
悪気がないから余計にたち悪い。
「ヤダよ。俺クラシックとか分かんねーもん」
「えーっ、いいじゃーん。ね? 駆くん?」
「あの、俺今日はこれで」
「え? 練習は?」
「すみません。ちょっと用事あるんで」
「え、あ……」
動揺する紗弥加を尻目に、駆はそのまま帰って行った。




