大切な人の誕生日
あと5分もすれば日付が変わる。
あと5分もすれば1月から2月に変わる。
そんなこと、今の彼にはどうでもいいことだった。
だけど……
あと5分もすれば大切な人の誕生日。
それだけは彼にとってとても大事なことだった。
「畜生! まとまらねー」
高校受験を控える少年、竜也は現在、勉強とは関係ないことをしていた。
「もうこんな時間!?」
携帯の端に見えた時間を見て彼は驚きを隠せず声に出す。
彼が見たところには「23:54」と記されていた。
「もう時間がない!」
彼がそんなことを言っている間も、時間は待ってくれるはずもない。
もうすでに先ほどから1分は経過している。
「どうすりゃいいんだ」
携帯を片手に、少年は悩んでいた。
あと少しで、幼なじみの誕生日だからだ。
あと少し。もうこのときには、あと3分と言うところまで迫っていた。
しかし、彼はいまだにメールを作成しては消し、を延々と繰り返していた。
もう10回は書きなおしているが、内容は様々だった。だが、彼にはどれも納得がいかなかったのだ。
そして、彼は何か思いついたのか急に椅子から立ち上がり、メールではなく電話を掛けた。
もちろん相手は、幼なじみ。
「麗! 今からおまえの家に行くから」
それだけ言うと、急いで隣の家の幼なじみのところまで走り出す。
「麗! 誕生日おめでとう!」
日本全国が2月に変わった瞬間、彼は大切な幼なじみの前でそう叫んだ。
http://ncode.syosetu.com/n4433y や
http://ncode.syosetu.com/n7907z/ の2人です。
麗が一言もしゃべっていないことに今気づいた……。
自分にしては珍しい終わり方ではないかな。