暑イ日ワ涼シイ所エ。
きっかけは些細な事から。
その日はとても暑い日だった。
夏休み真っ只中だというのにプールが何故か閉まっており、しかも家のクーラーも壊れている。
あまりのクソ暑さに、天国を求めこの市立図書館に逃げ込んだ。
「つっても、本なんてロクに読まねぇのに来てしまった。」
いや。この際だから何か本を読んでみてもいいかな。
やっていたゲームも攻略したし、友達はここぞとばかりに塾に行っている。
調度、暇だったんだ。そう思い本を探していると、一つのタイトルが目に入った。
「『泥棒のススメ』?」
手にとって見てみると、舞い上がった埃が喉を痛めた。相当長い間読まれてなかったのか。
濃い赤い色の本。
どこか西洋風の雰囲気のする、少し分厚い本だ。
文字が金で装飾されている。
3年前であれば高かっただろうな。
でも、何故だろう。
この本にやけに惹かれる。
気が付けば、俺はこの本を持って椅子に座っていた。
「……『泥棒のススメ。泥棒はいつも孤独でなければいけない。泥棒はいつもクールでなければならない。そしてスマートでなければ……』なんだこりゃ。」
やけに惹かれた割には、なんつー内容だ。
こんな内容なら、埃まみれになるまで放置されても仕方ないよな。
「ふぁ……眠い。」
時刻はまだ昼過ぎなのに、欠伸がでてきた。
慣れないことをしたから、拒絶反応でも出たか。
そして俺は机に身を沈めた。
本のページが風もないのにめくれたのも気付かずに。