爪
掲載日:2026/09/06
山でいちばん偉そうな鷹がいた。
いつも爪を出していた。
「見ろ、この爪を」
枝にとまれば、ガリッ。
岩に降りれば、ガリガリッ。
ウサギを見つければ、必要もないのに爪を鳴らした。
「俺に逆らうと、こうなるぞ」
動物たちは怖がった。
鷹は満足した。
ある日、谷の向こうから一羽の鷹が飛んできた。
爪は見えない。
羽も普通。
鳴きもしない。
偉そうな鷹は笑った。
「おい。お前、爪はないのか?」
鷹は答えた。
「あるよ」
「なら見せてみろ」
「なんで?」
偉そうな鷹は困った。
爪は見せるものだと思っていたからだ。
「強さを証明するためだ!」
「誰に?」
また困った。
そのとき、突風が吹いた。
二羽の鷹は空へ舞い上がった。
一羽は風にあおられ、必死に羽ばたいた。
もう一羽は羽ばたかなかった。
風を読み、翼を傾けただけで、するすると雲の上へ昇っていった。
偉そうな鷹は、はるか下から叫んだ。
「待て! 俺の爪を見ろ!」
雲の上の鷹には聞こえなかった。
それから偉そうな鷹は、
前よりもっと爪を見せるようになった。
空を飛べないことが、
バレないように。




