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最初にかける言葉は

作者: 斎藤由希
掲載日:2026/06/30



 今日、新しい命が生まれた。


 けれど子ども扱いはしない。





 私は科学者。


 プロジェクトを立ち上げた責任があるから、新しい命が生まれるたびに、子供の顔を見ている。


 あどけない顔というものは、いつだって大人の庇護欲をかきたてる。


 無条件で守ってやりたくなるし、かまってもやりたくなる。


 だが、そんな気持ちは我慢しなければならない。


 生れた子供はすぐに学習装置に入れて、必要な勉強をさせている。


 だから、明日からは大人と同じように接するだろう。





 昔はどうだったか知らないが、この世界は滅亡寸前だ。


 隕石飛来、自然災害、病気、労働力、人手、食料、エネルギー不足など、様々な問題が頻発している。


 皆で一丸となって対処しなければ、生きてはいけないのだから、子供の手だって借りるべきだ。


 本音を言えば、子供らしく遊んでほしいし、好きな夢だって抱いてほしい。


 でも、できないのだ。





 勉強が終わった頃、様子を見に行った。


 小さな子供が話しかけてくる。


「マスター。明日から何をすればいいでしょうか」


 この子には自分が機械だという意識がすりこまれている。


 夢を抱くこともできない、遊ぶこともできない生活に耐えられないだろうと思って、そうした。


 私の偽善かもしれないが、つらい思いをしてほしくなかったのだ。


 これでいいはず。これで……。


 もうこの世界では、大人ですら、やるべきこと以外を考える余裕がないのだから。


「たくさんのお仕事が待っているよ。人の役にたくさんたてる、誇らしいお仕事だ」




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