最初にかける言葉は
今日、新しい命が生まれた。
けれど子ども扱いはしない。
私は科学者。
プロジェクトを立ち上げた責任があるから、新しい命が生まれるたびに、子供の顔を見ている。
あどけない顔というものは、いつだって大人の庇護欲をかきたてる。
無条件で守ってやりたくなるし、かまってもやりたくなる。
だが、そんな気持ちは我慢しなければならない。
生れた子供はすぐに学習装置に入れて、必要な勉強をさせている。
だから、明日からは大人と同じように接するだろう。
昔はどうだったか知らないが、この世界は滅亡寸前だ。
隕石飛来、自然災害、病気、労働力、人手、食料、エネルギー不足など、様々な問題が頻発している。
皆で一丸となって対処しなければ、生きてはいけないのだから、子供の手だって借りるべきだ。
本音を言えば、子供らしく遊んでほしいし、好きな夢だって抱いてほしい。
でも、できないのだ。
勉強が終わった頃、様子を見に行った。
小さな子供が話しかけてくる。
「マスター。明日から何をすればいいでしょうか」
この子には自分が機械だという意識がすりこまれている。
夢を抱くこともできない、遊ぶこともできない生活に耐えられないだろうと思って、そうした。
私の偽善かもしれないが、つらい思いをしてほしくなかったのだ。
これでいいはず。これで……。
もうこの世界では、大人ですら、やるべきこと以外を考える余裕がないのだから。
「たくさんのお仕事が待っているよ。人の役にたくさんたてる、誇らしいお仕事だ」




