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第9話 入試本番と、最後の戦い

ついに、高校入試本番の日が来た。


少年は緊張で手を震わせながら、試験会場へ向かった。

筆箱の中で、俺たち文房具は静かに揺られていた。


(来たな……ここが“決戦の場”だ)


午前中の試験が始まった。

国語、数学——どれも難しい問題が並ぶ。


少年は俺をしっかり握りしめ、必死に書き続けた。


(大丈夫だ……落ち着け……お前ならできる……!)


俺は短くなった体で、紙の上を走り続けた。

芯が擦れるたび、寿命が削られていくのが分かる。


だが、折れるわけにはいかなかった。


午前の試験が終わり、昼休みになった。


少年は弁当を食べながら、筆箱をそっと机の脇に置いた。

その中で、俺たちは静かに次の戦いに備えていた。


赤鉛筆さんが優しく言う。


「ここまで来たのよ。あとは、あなたたちの力を信じるだけ」


消しゴム先輩がぼそっとつぶやく。


「……間違いは俺が消す。だが、最後の一歩は……お前が書くんだぞ」


シャーペン後輩が震えながら言う。


「せ、先輩……僕、祈ってます……!」


(ああ……頼むぞ。俺は……もう長くねぇ)


午後の試験が始まった。

残すは二教科。


少年は深呼吸をして、俺を手に取った。


「……頼むよ、相棒」


(任せろ……最後まで付き合う)


試験が進むにつれ、俺の体は限界に近づいていた。

少年の指にほとんど隠れるほど短くなり、芯は紙に触れるたびにミシッと嫌な音を立てる。


(まだだ……まだ折れねぇ……!)


少年は必死に問題を解き続けた。

その手は震えていたが、目は真っ直ぐだった。


そして——最後の教科。

最後の問題。


少年は俺を握りしめ、震える手で文字を書き始めた。


(行くぞ……これが……最後の戦いだ……!)


紙に触れた瞬間、芯がビキッと音を立てた。


(……っ!!)


折れる。

このままじゃ折れる。


だが——


(折れねぇ……!

 ここで折れたら……全部が無駄になる……!

 お前の努力も……涙も……全部……!

 だから……折れねぇ!!)


少年の手が震えながら、最後の一文字を書き切った。


その瞬間、芯がパキッと音を立てかけた。


だが——折れなかった。


少年は大きく息を吐き、俺をそっと机に置いた。


「……ありがとう。君がいたから……最後まで書けたよ」


(……ああ……よかった……)


筆箱の中で、文房具たちが静かに息を呑んだ。


赤鉛筆さんが涙ぐむように言う。


「あなた……本当に……よく頑張ったわ……」


消しゴム先輩がぼそっとつぶやく。


「……最後の一文字……見事だったぞ」


シャーペン後輩が震えながら言う。


「せ、先輩……かっこよすぎます……!」


俺は短くなった体で、静かに思った。


――これでいい。

――あとは……結果を待つだけだ。

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