第3話 出荷、陳列、そして運命の出会い
俺たちは箱ごとトラックに積まれ、ガタガタ揺られながら運ばれていった。
行き先は文房具店。
ここからが“本当の勝負”だと、鉛筆削り師匠は言っていた。
「売れなきゃ終わりだぞォ! 売れ残りは倉庫行きだァ!」
あの言葉が、ずっと胸に刺さっていた。
店に着くと、俺たちは棚に並べられた。
周りには色とりどりの文房具がずらりと並んでいる。
「お、また売れたぞ」
隣の棚で、エリートシャーペンが誇らしげに笑っていた。
次々と手に取られ、レジへ運ばれていく。
「やっぱシャーペンだよなー」
「0.3mmの新型だって!」
「これ、書き心地ヤバいらしいよ」
羨望の声が飛び交う。
一方、俺はというと——
誰も見向きもしない。
「……なんでだよ……」
赤鉛筆さんが優しく声をかけてくれる。
「気にしないで。鉛筆はね、必要とされる瞬間が必ず来るのよ」
「でも……このままじゃ売れ残りだ……」
消しゴム先輩がぼそっと言う。
「まあ、焦るな。売れ残りは……地獄だがな」
「脅すなよ!!」
エリートシャーペンが鼻で笑う。
「売れないのは実力不足だよ。市場は正直だからね、木の棒くん」
ぐぬぬ……!
悔しい。
悔しすぎる。
日が経つにつれ、俺の周りの鉛筆たちも売れていった。
残っているのは、俺と数本だけ。
「……マジでやばい……」
やさぐれ始めたその時だった。
カラン、と店のドアが開く音がした。
一人の中学生の男の子が入ってきた。
制服姿で、どこか疲れた表情をしている。
「……新しい鉛筆、買わなきゃ……」
その声に、俺の芯がビクッと震えた。
来た。
チャンスだ。
ここで買われなかったら、俺は終わりだ。
エリートシャーペンが余裕の笑みを浮かべる。
「どうせ僕が選ばれるよ。
君みたいな古臭い鉛筆に勝ち目はない」
「うるせぇ……!」
俺は全力でアピールした。
(頼む! こっちを見ろ!
俺はまだ削りたてだ!
芯も真っ直ぐだ!
書き心地だって悪くない!
お前の勉強、絶対に支えてみせる!!)
もちろん声は出ない。
でも、心の中で叫び続けた。
少年の手が、ゆっくりと棚に伸びる。
エリートシャーペンの方へ——
「やめろおおおおおおおお!!」
俺は全身で震えた。
芯がビリビリするほど、必死に存在を主張した。
すると——
少年の手が、ふと止まった。
「……あれ? この鉛筆……なんか、いいかも」
その手が、俺をそっとつまみ上げた。
「これにしよう」
その瞬間、俺の世界が光に包まれた。
エリートシャーペンが呆然とつぶやく。
「……なんで……?」
赤鉛筆さんが微笑む。
「ほらね。必要とされる瞬間は、ちゃんと来るのよ」
俺は震えながら思った。
――絶対に後悔させねぇ。
――お前の勉強、俺が支えてやる。




