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第1話 転生

ブラック企業で働き続け、心も体も限界だった。深夜のオフィス。

蛍光灯の白い光が滲み、キーボードを叩く指先の感覚が消えていく。


「……もう働きたくない……

 でも……誰かの役には……立ちたかったな……」


最後に浮かんだのは、そんな矛盾した願いだった。


意識が途切れた瞬間、世界が暗転した。


次に目を開けたとき——

俺は、見知らぬ“狭い空間”に閉じ込められていた。


(……どこだ、ここ……?)


壁に囲まれた暗闇。息苦しさはないが、体が動かない。

しばらくすると、上から何かが降ってきた。


ザラッ……ザラッ……


(な、なんだ……? 砂……?)


続いて、ドロッとした液体が降り注ぐ。


(うわっ……冷たい……! 誰だよ、やめろって!!)


声を出そうとしても、音にならない。


そこへ突然、巨大なプロペラのようなものが降りてきた。


グルルルルルルッ!!


腹の奥をかき回されるような感触。痛みはないのに、恐怖だけが全身を支配する。


(やめろ……やめろ……!!)


やっと解放されたと思ったら、今度は全身を押し潰されるような圧力。


ギュウウウウウッ……


(う、うわ……! 俺……細く……?)


押し出され、伸ばされ、切断され、熱風を浴び、油をかけられ——

気づけば俺は、細長い円筒状の“何か”になっていた。


(……俺……いったい……何になったんだ……?)


溝の彫られた板に挟まれ、ガガガッと削られ、

液体を塗られ、乾かされ、また削られ——


そして、小さな箱にぎゅうぎゅう詰めにされた。


そのとき、どこからか声が聞こえた。


「文房具業界へようこそ!」


(……文房具……?)


その言葉で、ようやく理解した。


——俺は、鉛筆になったのだ。


箱の中で揺られながら、俺は静かに考えていた。


(……俺は、鉛筆になったのか)


削られ、押し潰され、切られ、塗られ、乾かされ——

気づけば、細長い木の身体に黒い芯を宿していた。


人間だった頃のように歩くことも、話すこともできない。

だけど——

(……誰かの役に立てるのなら、それでいい)


最後に願った言葉が、胸の奥で小さく灯る。


そのとき、箱の外から声が響いた。


「新入り、準備しろ! これからが本番だ!」


(……本番?)


何が待っているのか分からない。

削られるのか、折られるのか、使われるのか——

それとも、売れ残って捨てられるのか。


不安はある。

怖さもある。


だけど、胸の奥で小さな芯が震えていた。


(……行くしかねぇだろ。

 俺はもう、鉛筆なんだから)


こうして、俺の“鉛筆としての人生”が静かに始まった。

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