エピローグ
ポチャン……───────
水滴の落ちる音
ザァーーーー……─────
雨が降る音
グシャリ……─────
人の身体に刃物が刺さる音
「……私にはそう聞こえたんです。」
「へぇ…それで────殺した感触はどうでしたか?」
目の前の白衣を来た中年男性は、気だるさとほんの少しの興味を「水人間」に向けた。
「なんか…ハンバーグをこねるような……───食感で言うならきっと、あん肝とかフォアグラですね」
「そうなんだ…。…今日は気分どう?───記憶は思い出せそうかな?。カルテによると……君は、元「人間」だったんだってね……。」
「そうなんですね……、信じられない……」
透明な水人間は自身の掌を見た。掌で顔を隠しても、医者の顔が見えるくらい透明で美しい。
医者は水人間の頬に触れた
「…君は、こんなにも美しいのに……───だいぶ傷付いてきたみたいだね……」
「傷…付く」
「君は我慢しすぎてしまったんだよ。」
医者は水人間の頭を撫でた。
(温かい……)
「今日のカウンセリングは終わりだね…。また、明日…沢山話そうか」
医者が微笑むと、水人間は水温が上昇した。
水ではなくこれではお湯……
胸など無いのに、苦しい
キラリと医者の左手の薬指に光るのは銀色の指輪
(指輪………指輪って何─────)
《これ、カレ死から貰っタンです──────》
《 子…アンたも早クイイヒト》
《お見合イとかした方ガ》
《まだ居ないの?》
顔にはモザイクがかかっている──────
でも、声だけで吐き気がする
殺意が湧く
「じゃあ、また明日ね」
「先生……待ってください」
どうか……
「ん?」
外れてますように
「結婚、してるんですか?────」
「……妻は数年前に他界して、娘は「人間」になってしまったんだ」
「……可哀想────」
良かった────良かった───
先生を殺さずにすんで……
「だから、今は君との会話が……なんて────…おじさんの戯言」
ザァーーーーー…………
雨が降る
誰かが泣く
水は色んな表現と意味がある
此処はどこかは分からないけど
とりあえず今は
「戯言にしないで……」
溺れて死にそうなくらい
なんだか心が幸せだから
はい、エピローグです。
透子が「水人間」と入れ替わった後の話。
「水人間」は透子の代わりに人間の生活を送り、透子は「水人間」の代わりに「水」として活きる事にした。
医者でカウンセリングしてたオジサンは「水人間」の父親。なので、オジサンは人間じゃない。
人間になって自由を求めた娘(水)が去ってしまった寂しさで、透子の心を利用して、自分の手中におさめたんですね。
この先の透子がどうなったかは分からないですが、これはこれで幸せなのではと願いたい。
お互いに寂しさを埋めてあげてくれ……
以上ですっっ
他の小説もあるので、是非ともそちらも読んでみて下さいっ
此処まで読んで頂きありがとうございました