3.〇ね
《透子、たまには家に帰ってきなさい》
《ちゃーんとご飯食べてる?》
《彼氏できた?》
《会社では上手くいっとる?》
《お母さん、ヨガ始めてみたよ》
《会社辞めたくなったら辞めてええんやで。》
《時間ある時、返事しなさいよ》
ザァーーーーーー………!!
プルルル───プルルル───ガチャッ
『透子~!あんたなんでお母さんのメール無視しよんの!?。心配したやないか~』
「お母…さん……」
久しぶりに聞いた母の声は、変わらず温かった。スマホ越しからでもかなり安心する。
『どしたん?、なーんかあっんやろ~。お母さんに話してみぃ』
ザァーーーーーー………
「私……────私────」
『?…あんた────"誰か"と一緒におるん?』
「え……」
『可笑しいねぇ……───今日、雨降るって、天気予報で言ってなかったんよ』
「お母さん…?」
母は一方的に喋っている─────
でも、可笑しいのは
「ねぇ!!誰と喋ってるの!?」
『あんたの好きな鶏大根、作って待っとるね────……やだ、あんた!そこにおったん?。何しとん───』
グチャ……
プツン─────プープープー……
何かが潰れる音と共に電話はそこで切れてしまった。
かけ直しても───かけ直しても……
お母さんが電話に出る事は、もう二度と無かった。
ピコン
【お節介ばかり───私の気持ちなんて考えた事ない癖に】
ピコン
【後輩は贔屓されて、周りの先輩達に可愛がられて】
ピコン
【上司は都合のいいように私を使ってくる】
ピコン
【今ぶつかってきたオッサン死ね】
ピコン
【スカート短くしてる癖に、痴漢されたら騒ぐのなんなの?。死ね───】
ピコン
【死ね───死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね】
ピコン
【あ────そうか……】
ピコン
【もう一人の"私"の為に……"私"が殺せば良いんだ。】
通知音が鳴り止まない。スマホを地面に叩きつけて、大雨の中、透子は走り出した。
ひび割れたスマホの画面に映し出されたのは……
ピコン
【自分で望んだ事だよ?───今更、後悔したって遅いんだよ】
ピコン
【透子…、次は誰を〇す?─────】