2.突然死
「齋藤さんが…昨晩、入浴中に亡くなったと……旦那様からご連絡を頂きました────」
「溺死」でした───と……上司はそう言った。
齋藤さんと仲が良かった社員は、みっともなく泣き喚き、私はまたSNSで呟いた。
ポチポチ
【嫌いなお局が風呂で死んだって~ラッキー】
「水人間」さんから、またイイネがついた。
ピコン
【おめでとうございます。いやあ…なかなかしぶとい方でした…。最後の最後まで、暴れていたので……田シロこテめ氏をビ苦】
「?……たしろ……こて?──何だそれ。」
ポチポチ
【水人間さんって面白いですね笑】
ピコン
【ありがとうございます】
ポチポチ
【もし良かったら、今度ご飯行きませんか?。水人間さんに愚痴聞いてほしー笑】
ピコン
【なら、今夜あなたの家にお伺いいたします。】
「は?─────」
一気に血の気が引いた。
この人は私の家を知っている?───
私の周りに「水人間」なんて名乗る人物は居ない。
じゃあ………一体この人は────
「あの、雨宮さん…、林さんと齋藤さんの受け持ってた作業なんだけど……──やってもらえますかねぇ?」
オドオドしながら、死んだ人間の仕事を押し付けてきたのは、上司の川島。
ハゲていて、眼鏡をかけている気持ちの悪いオッサンだ。自分がいかに楽して給料を貰えるのか───昇進出来るのか───そんな事しか考えられない脳味噌カス野郎である。
私の周りにもっと仕事ができる人は沢山居る。でも、そう言った方達は癖があって、拗らせているのが殆ど。要は素直に仕事を引き受けるような人間ではないのだ。
「…あ、齋藤さんとチームを組んでいらっしゃった大迫さんとかにお願いした方が良いのでは?……」
「いや……断られちゃうから───キミ以外にやる人いないんだよ」
そういう訳だから……と言って、資料をどさっと置いて去ってしまった。
(本当に…此奴だけは、包丁とかで滅多刺しにしてやりたい。)
不要な人間が何故この世に居るの?
何故、姑息な手を使った者が安定した役職や給料が貰えて、真面目にやっている者が損をするのだろうか。
ポチポチ
【死ね、クソ上司】
ガシャンッ!!!!!!─────
SNSで呟いた瞬間だった────
誰かが倒れたのか
社員の悲鳴が室内全体に響き渡る。床は何故か濡れていた……
「か…川島さん!!!」
「息してないぞ…」
「誰か!!きゅ、救急車を!!!!!」
ペットボトルの蓋が私の足元にコロコロと転がってきた。
私はそれを踏み付けた。
ピコン
【川島死亡────透子さんが幸せになれるように、今日も祝福の雨を降らします。それでは今夜……────】
ア ナ タ ヲ───────────