表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔犬と少女  作者: KAIN
第三章
6/11

第六話

 熊の魔物の肉は、自分に力をもたらしてくれた。

 身体は少しずつ大きくなり、魔力も戻りつつある。

 リルを守れるだけの強さを、自分は少しずつ身につけつつある。

 それがどういう感情なのかは、まだ解らないけれど……

 それでも。自分は彼女を……守りたい。


 リルは、ゆっくりと目覚めた。

 身体をゆっくりと起こす、昨日は、森の中で食べ物を探していた時に、突如として現れた魔物に襲われ、そして……その魔物はどうやら何かがあって死んでしまったらしい。それが何だったのか、自分には解らない。だけど……

 すぐ近くで何かが動く。あの日拾った小さい犬、ラッシュだ。かつて両親に聞いた、故郷に伝わる犬の怪物の名前、ふわふわとした毛並みが特徴的な魔物で、早く寝ない子供はその魔物に喰われる、という昔話があった。いつもいつも夜更かしばかりの自分を戒める為、亡き両親が語ってくれた昔話、その当時は怖かったけれど、母が優しく抱きしめてくれたおかげで眠る事が出来た。

 始めて会った時に、そのふわり、とした毛並みが、その昔話を聞いた時に感じた恐怖と、自分を抱きしめてくれた母の温もりを思い出させてくれた。

 だから、思わずその怪物の名前を付けてしまっていた。

 だがもう、両親はいない。

 自分は一人……

 この家の中で、孤独に生きていくしか無いんだ。

 そう思っていた。

 だけど。

 すっ、と。

 床についた腕に、誰かが頬ずりをしてくる。見えずとも解る。ラッシュだ。

 温かい。今朝と、その前の夜、ラッシュを抱きしめて眠った時にも感じた温もり、あんなにも……温かかったのは……とても久しぶりだった。

 ラッシュと……ずっと一緒にいたい、そう思った。

 だけど……もしかしたら……

 もしかしたら、ラッシュは……

 リルは、目をぎゅっと閉じ、またしても自分を抱きしめてくれた。


 何かを考えていた様子のリルが手を伸ばして、自分をぎゅっ、と抱きしめてくれた。

 ラッシュはその温もりを感じながらも、リルの頬に頬ずりをしていた。

 そうしてしばらくの間、リルに抱きしめられていたが、やがて眠くなったのか、そのまますう、すう、と寝息をたて始めていた。自分は、例え生の肉だろうと食べられるが、彼女は……

 彼女は、大丈夫なのだろうか?

 解らない。

 少し……調べるべきかも知れない。

 ラッシュは、寝息をたて始めたリルの腕から、するりと抜け出す。

 そして。

 小屋の中から、そっと抜け出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ