第三話 アルトゥール・フォン・シュヴァルツという悪役
アルトゥール・フォン・シュヴァルツ。
彼は前世の俺が好きだった漫画、「黎明の歌」における最大級の敵キャラの一人であり、最も有名なキャラクターであった。
「黎明の歌」は、主人公である勇者が世に害なす「厄災」を払うために立ち上がり、襲いくるさまざまな困難を乗り越えながら成長する物語だ。
内容自体はよくある、あの有名な週刊誌に載っていそうなものだったのだが、ファン以外にも題名を知られるほど世間を騒がせたことがあった。
その原因となったのが、アルトゥールなのだ。
アルトゥールは当初、勇者の仲間の一人として登場していた。その美しい容姿と優しい性格、能力の高さから、勇者にも信頼される重要なキャラクターだった。
また、快活で前向きな主人公に対して、どこか憂いを帯びた表情を浮かべることが多かったアルトゥールに魅了されるファンも多く、彼は主人公以上の人気を誇っていた。ファンはこぞって、物語の終幕までアルトゥールが主人公の力となり、エンデングで彼が幸せな表情を浮かべてくれることを望んでいた。
しかし、その期待は物語の中盤で大きく覆されることとなった。
敵との厳しい戦いの中、アルトゥールは助けを求めてきた主人公に剣を向け、裏切ったのだ。
「俺はお前がずっと嫌いだった。その顔を見るだけで虫唾が走る。俺のことなど、何も知らないくせして」
という謎の言葉を残して。
突然のことに怒り、嘆き悲しむ主人公に対し、アルトゥールはその身に宿した邪悪な力で数々の厄災を招き、主人公を追い詰めていった。
しかし、最後には苦しみを乗り越えた主人公により、討伐されてしまう。
そして、アルトゥールの突然の裏切りの理由は明かされないまま物語はエンディングに突入し、彼以外の登場人物たちは大団円を迎えた。
ファンは大いに荒れた。
なぜアルトゥールが殺されねばならなかったのか。アルトゥールが哀れだ、と。
ファンに愛されながらも、ただ一人だけ悲惨な結末を迎えなければならなかった哀れな悪役。
アルトゥール・フォン・シュヴァルツは、そういうキャラクターなのだ。




