コント「接客」
店員「いらっしゃいませ。何様でしょうか?」
客「なんで、店に入った途端喧嘩売られてるのかな俺は」
店員「すいません、間違えました。何名様でしょうか?」
客「一番やっちゃいけない間違え方だよ。えっと、一名ですけど」
店員「店内全席禁煙となっております」
客「喫煙者には生きにくい世の中になったな」
店員「それでは、カウンター席にご案内しますね」
客「ちょ、ちょっと待って」
店員「どうされましたか?」
客「......え、ここコンビニだよね?」
店員「そうですが?」
客「俺はいったいどこへ案内されようとしている?」
店員「あ、もしかしてテーブル席が良かったですか? 申し訳ありません。本店にはカウンター席しか無いんです」
客「あ、もしかしてレジのカウンターのこと言ってる? 別に案内必要ないんですよ。もう店入ったら目の前に見えてるんですよ」
店員「いえお客様、油断してはなりません。この店のカウンター席は空いているように見えて空いていないことが良くあるのです」
客「いや確かに、"休止中"だったことに気付かずにレジの前に立って恥ずかしい思いをしたことはあるけどね」
店員「それだけではありません。素早く席につかないと、他のお客様に先を越されることもございます」
客「うん、隣のレジに並んでたはずの人が突然横のレジに割り込んでくることもあるよね」
店員「そういったトラブルを防ぐために私たちコンビニ案内人がいるのです」
客「あなた店員じゃなかったんですね。あ、よく見たら名札のところに案内人って書いてますね」
案内人「あ、これは名前です」
客「適名適所」
案内人「それでは問題ないようですので、カウンター席にご案内します」
客「問題しかないんですよね。そもそもまだ一つも商品買ってないのにカウンター行ってどうするんですか」
案内人「メニュー表をお渡ししますので、そこから注文して頂ければ直接お持ちします。ちなみに、こちらがメニュー表です」
客「へー、色々あるんですね。なになに、"新潟産コシヒカリの三つ角の宝、梅干しを詰めて"。なにこれ」
案内人「梅おにぎりのことですね」
客「何フランス料理風に言ってるんですか。めっちゃ分かりにくいわ」
案内人「店長がフランス通なんですよ」
客「あとこれ何ですか。"ツナくんとマヨちゃんは、遠足、運動会、修学旅行、どの行事でも弁当の中身が同じでした。さて、弁当の中身はなんだったでしょうか?"」
案内人「なんだと思います?」
客「すっと言えや。なぞなぞやめろや。あと答え絶対言うな、今考えてるから」
案内人「ヒントいります?」
客「ちょうだい」
案内人「ツナ、マヨ、三度、一致、ということですね」
客「ほぼ答えじゃねえか!! ヒント出すの下手くそか!! 答えはツナマヨサンドイッチ!!」
案内人「正解です」
客「ていうか普通に書いてるの無いんですか? あ、雑誌の名前は普通に書いてる」
案内人「残念ながら、ネタが思いつかなかったんです。案内人として一生の不覚です」
客「どこに案内人の誇り持ってんですか。ていうか、これあなたが考えてたんですね。
あ、この雑誌写真もついてるんですね」
案内人「はい。表紙から背表紙まで、1ページ残らず写真を掲載しております」
客「まんま雑誌じゃねえか!! いやダメだよね!? これじゃ雑誌買う意味なくなっちゃうよね!?」
案内人「立ち読み防止です」
客「いや場所が本棚からカウンターの前に変わるだけで、立ち読みは無くならないよ!? なんなら多分増えるよ!?」
案内人「それでご注文はどうなさいますか?」
客「え、じゃあこの"ドラゴンフライ弁当"で。多分竜田揚げ弁当ですよね」
案内人「あたためますか?」
客「お願いします」
案内人「かしこまりました。私が高校生の頃の話なんですけどね」
客「え、何」
案内人「始業式とかでよく校長先生の話とかあるじゃないですか? そういう話を聞くと、なぜか肩がよく凝ってたんですよね。で、なんでかなあって思ってたらとあることに気づいたんですよ」
客「はい?」
案内人「堅苦しい話だったな、と」
客「......」
案内人「どうでしたか? あたたまりましたか?」
客「あたためるって、場を温めるって意味だったんですね。いやむしろ、なんかすげえ鳥肌立ってますよ」
案内人「あれ、渾身の笑い話だったんですけどね。分かりづらかったかな。あ、弁当あたためますか?」
客「いやそのままで大丈夫です。......一刻も早くこの店から出たい。そして二度とこのコンビニには来ない」
案内人「袋いりますか?」
客「いや5円の出費は避けたいんで大丈夫です」
案内人「当店ではエコ素材のレジ袋を利用してるので、無料ですよ」
客「また来ます」
案内人「またお越しください」