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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
三章 俺の異世界転生は学園ラブコメもあるらしい
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予想外の夜


「‥‥‥あっ」


自分がしてしまった行動に、思わず間抜けな声が漏れてしまう。その場にはなんとも言えぬ静けさが舞い降り、ただただ自分という不審者が一同から注目の的となる事態に陥っていた。しかし悲しいことに俺というやつはこういうときに限って、この空気をなんとかせねばと自爆特攻してしまう生き物であった。


「‥‥いやぁこんな豪華で味の良いご馳走が食べられて、感動だよなぁ!いやね、そんな中で貴女みたいな美しい人を前にしてね!そう、突然と?そうそう!唐突に主催者側に感謝を述べたくなったんですありがとうございます」


気づけば身振り手振りを交え、我ながら実に苦しすぎる言い訳がペラペラと口から溢れ出る。

これはもう一発退場アウトかもしれないと、そんな心配も頭によぎり始めたそんな時、彼女が優雅な所作で俺の言葉に返答した。


「‥‥まあ、そうでしたのね。では、貴方にとって今宵が素敵な夜になりますように。この度はご参加頂き、誠に嬉しく存じます」


想像していたものとは違う彼女のその発言に驚き、伏せていた顔をはっと上げる。視線の先にいる彼女は、この場に姿を現した時と同様の微笑を称え、まさに堂々とした振る舞いをみせている。


その姿は、この場にいる誰しもに彼女の器の大きさを感じさせたようで、所々で人々から称賛の声が漏れていた。何はともあれ、この場はこれで一段落ついたと、そんな謎の安堵感に包まれていたダサい俺である。



「んでソラ。てめぇが阿呆なのは重々と承知の上で聞いてやるが、ありゃなんの真似だったんだ?」


「そうだぜソラ兄ちゃん。さすがに付き合いの長い俺でも度肝抜かれたぜ?」


「いやなんだ。うーむ」


リサとラルに先程の件で声をかけられ、曖昧な回答でお茶を濁す。

晩餐会も終盤に差し掛かり、それぞれが商談や食欲を満たすなどの要件を済ませたことで、俺たち宿り木亭メンバーは再び同じテーブルの前に集合していた。


あの時。今宵の主役ともいうべきプリンセスの登場に突然大声を上げてしまい、なんなら指差しまでしてしまったわけだが、それは何も俺の頭が突然狂ってしまったわけでは決してない。そうせざるを得ない理由がもちろんあったのだ。


あれはこの異世界に召喚されて間もない頃のこと。ふと立ち寄った屋台で注文をしようとした時のことだった。残り残数1つの食べ物に対して、醜い争いを繰り広げてしまったことがあった。その時の相手というのが、まさしく彼女の顔と重なってしまったわけで、あのような失態に繋がってしまったわけだ。


だが、あの時はたしかに男性の声であったはずだし、なによりこの場にいる彼女にはあのいけ好かないイメージが全く感じられない。そう考えると、もはやただの自分の勘違いだと済ませたほうが良いのではないかという気さえしてくる。


「まあ、世の中自分と同じ顔が3人はいるなんて言葉もあるくらいだしな‥」


「‥‥‥ソラ、どうしたの?」


「ミラ。そいつはもうほっといてやれ。何やら別の世界へ旅立っちまってるみてぇだしな」


「そうですね。今しばらくそっとしといてあげましょう」


そうやって皆とたわいない会話を続けていると、再び男性の声が会場内に響く。


「ご来場の皆様。今宵はお楽しみ頂けているでしょうか。さて、この度は我が娘の成長を、皆様にもご覧いただきたく思います。メア、ご披露しなさい」


「はい。お父様」


メアと呼ばれたその女性は頭を少し下げると、会場にいる人々に静かに語りかける。


「どなたか私と踊っていただける殿方は‥‥いらっしゃいますでしょうか?」


それを合図と、比較的若い世代の貴族男性が、ここぞとばかりにお姫様の周りを囲み始めた。


「おーおー。貴族の皆様方はお姫様にご執心みたいだぜ。なんだったらてめえ等も立候補でもしてくりゃいいんじゃねえか?上手くいきゃあ玉の輿もいいとこだぜ」


「タマの腰?なんだよタマばあちゃんの腰がどうしたってんだよ。まあよ?最近は腰が痛いって口癖みたいに言ってて、俺も何度も駆り出されたことか…」


「ラルくんラルくん、君は少々黙っていなさい。リサが言っているのは違う意味だとおじさんは思うぞ」


「ん?そうなのか」


俺達宿り木亭の一行がそんな話に興じていると、お姫様を取り囲む一帯がにわかに騒がしくなっていることに気づく。

何事かとそちらに注目していると、その中心であるはずのお姫様が突如、貴族の男性達を置き去りにするように、ヒールで床をカツンカツンと高い音を鳴らしながらこちらに近づいてきた。

そして何故かその女性は、俺の目の前にまで来たところで停止し、優雅な所作で頭を下げた。


「わたくしと…踊ってくださらないでしょうか?」


「へあっ?!」


何が起こっているのか全く理解できず、思わずリアクション芸人顔負けの声を張り上げてその場で凍りついてしまう俺であった。

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