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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
三章 俺の異世界転生は学園ラブコメもあるらしい
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話は遡り

ーーパーティー前日のこと。


宿り木亭の日中間の勤務が一段落し、店の外は徐々に夜の暗さが降り始めていた。

そんな中、ミントちゃんは慣れた手付きで店の1日の売り上げ計算等の雑務をこなしながら、こちらに声をかけてくる。


「よし、おわりっと。ソラさん、一息つきませんか」


「おっいいね。こっちもちょうど落ち着いたところよ」


俺としてもちょうど仕事のキリがついたところであった為、お互いの1日の仕事を労う意味でも、ミントちゃんと俺は騒がしいホールを後にして休憩室に向かうことにした。


以前なら今の時間帯はむしろ、これから酒等を提供する忙しないものになるはずなのだが、そこは最近になって売上好調の波が押し寄せている我らが宿り木亭。進化が止まらない。そう、待望のシフト制の導入である。


「子ども達は遅くても夜までの勤務ね。あとは私達大人の時間。任せておきなさい」


きっかけはこのような有無を言わせぬラルのお母さんによる進言だった。

要するに俺たちのような10代そこらの子どもが、夜分までぶっ通しで働くことを良しとしないといった優しさだったのだろう。


まあ、これには俺も完全に同意だった。成長期はよく食べ、よく寝ないといけないというのは、向こうの世界においても必然だった。

無理をしていいのは仕事の納期が迫りどうしょうもなくなった大人か、時間が足りないとやりたいゲームを徹夜してやってしまう大人くらいのもんだろう。うんうん。

というわけで、主に夜間帯の業務は新加入のお姉様方にシフトしていったわけだった。


休憩室に向かった俺とミントちゃんだったが、俺の頭には1日の疲れを癒やす意味でも、少し用意しておきたいものがあった。


「あっそうだ。ちょいと野暮用済ましていくから先いっててね」


「はーい。ではお言葉に甘えて」


そう声をかけ、ミントちゃんには先に行っていてもらうことにする。その後、俺の方も簡単に準備を済ませ、すぐに休憩室へ向かった。


「いやぁごめんね、おまたせして。あっこれどうぞ」


「あらら、ありがとうございます。これは‥まあ。例の新作ですか?わぁ嬉しい!私これ飲んでみたかったんですよ〜!」


「あはは。ちょっと凝り性なのもあってつい興が乗ってしまって。一応季節のライミールの果実のエキスを抽出して、ハミルの葉を添えてるんだけど。まあ季節ものは数も出回っているから比較的単価も安いし、味も良いしで間違いないなという感じだね。しかも意外と注文もついて嬉しいもんでさ」


「ふふふ。やはり私の見立てに狂いはなさそうですね。ソラさんはいい目をお持ちですよ。今回は仕入れから値付けなどもお願いしていましたよね。うーん、あとは‥‥そうですね。あと一声ってとこですかね」


「あーミントちゃん。またそれって、あと一声がなんなのかは聞いても教えてくれないやつでしょ」


「ふふふ。自分の頭で考えるのが商売の基本ですよ?」


「手厳しい先生だこと」


「褒め言葉として受け取っておきますよ」


そんな話を挟みつつ、話は本題に移っていく。


「ちょ、ちょっと待った。社交界みたいなものに俺たちも参加するってこと?」 


「ええ、まあそうです」


「なんかこの前の店長候補の話だったり、最近驚くことばかりでね。実はまだなにか隠し玉があったりするのかなって勘繰ってしまうぞ」


異世界転生なんていうとんでもイベントをこなした後であるためか、まあそこまでの驚きはないにしてもだ。元々仕事以外はマイスイートホーム(5畳ワンルーム賃貸)にて創作物の鑑賞等に勤しんでいた俺にすれば、激動の毎日を送っているといっていいはずだ。


「ふふふ。まああったとしても、それもいいことじゃないですか。何事も経験ですよ?ソラさん」


さすがミントパイセン。俺ってば向こうで30年ちょっと生きてたはずなんだが、この小さな経営責任者さんには色々な面で敵わないと実感させられる


「んで、ミントちゃんのことだからきっと、そのパーティーに参加することは、ウチの店にとって相当な利益となることでもあるんでしょうよ」


「はい。その通りです。エリザベート家とはお父さんとの繋がりもあって、以前から懇意にさせてはもらっていたのですがね。今回、重大な発表があるとのことでお呼ばれされているのです」


「ふむふむ」


俺もこの世界に身を置くようになって少しづつ知識も増えてきたことで、このエリザベート家という貴族様が、どえらい権力者だということはなんとなく理解できるようになっていた。


「お父さんにお話したら、全くもって興味がないから私に代わりに行ってきてほしいとのことでした。まったく。常日頃からお父さんには、もうちょっとお付き合いを大事にしてと口を酸っぱくして言っているんですが。あれでも相当顔は広いんですから、ちゃんとしてほしいものです」


ミントちゃんは少しだけ年齢相応のぷりぷりとした怒った顔を見せながら、腕を組む動作をみせる。じつにかわいらしいことである。


「まあ、それは置いておきまして。要するに私達には好機が訪れたということですね。語らずともですが、そんな場に集まるのは、権力者を始め豪商と言われる面々ももちろん来られるわけです」


「なるほど。であればつまり俺たちは営業にいくということなんだね?」


「え、営業?」


「ふふふ‥。そういうことなら俺も張り切ってお役に立てるようにしたいところだってばよ。向こうの世界でダテに外回りしてたわけではないことを今ここに証明してみせよう」


「まあ、意気込み十分ということですね。それでしたら、私からも是非お願いしたいです」


「よっし。そうと決まればさっそく明日に向けて2人で作戦会議と‥」


「あっ言い忘れましたが、ミラさんとラルくん、それにリサさんも一緒ですよ」


「‥‥‥まてよ商談しにいくわけだよね。そんなところに腹ペコ大将軍以下、そのお供を連れて行くということは、今から大混乱の予感しかしないんですがその心は?」


「皆で行ったほうが良い思い出になりますからね」


「ほんとだねわーい!」


これを聞いた俺は率直に、明日は明日の風が吹くだろうという言葉を思い出したのであった。

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