華やかな夜
貴族たちによる社交界パーティー。
これを聞いてイメージとして浮かぶのは、豪華絢爛な食事や歌や踊りなどを、夜な夜な高貴な人々が集い楽しむというものだ。
まあそちらは表向きの体裁として、実際のところは開催元の権力誇示の場であったり、政治的社交場としての側面が大きいのだろうと思うが。
では、向こうの世界ではthe一般ピープルだった俺みたいな凡人が、そんなものを目にする機会があったのかというと、そんなことは全く無かった。
強いていえばテレビドラマや小説、アニメなどの創作物の中だけで偶にみかけるだけであり、要するに無縁で生きていたわけである。
では、何故俺がこんな話をしているのかといえば。
現在、我らが宿り木亭御一行は、そんな華やかなパーティーに参加しているからにほかならなかった。
「うおおおお!スッゲええ!よっしゃあ!!とりあえずあそこにある美味そうなメシに突撃だあああ!いこうぜミラねぇちゃん!」
「喜んでお供させてもらう。さあ早く。一刻も早く行きましょう。時間が惜しい」
「おいオマエら!少しは場の空気ってもんをだな‥ああっ聞いてねぇ!?」
「ふふふ、やはり皆さんを連れてきて正解でしたねぇ」
お馴染みと言ってしまってよいのか我らが宿り木亭メンバーの4人は、各々に反応をみせている。
そんな中、俺はやはり場違いな場所に潜り込んでしまったのではないかと、1人戦々恐々とした気持ちに陥っていた。
「ミントさんミントさん。僕たち私達は何故にこんな場違いな場所に招かれてるんでしたっけね。ほら、お気づきでしょう?ご来場の皆様方の視線が痛いです」
「ふふふソラさん。何も言ってるんですか。昨晩お話した通りです。何も物怖じする必要はありませんから。楽しまなくては損ですよ?」
ミントちゃんは普段とは違うドレスのような純白の洋装に身を包み、朗らかな表情を浮かべている。
また、俺を含め他の宿り木亭メンバーにおいても、この場に似つかわしい服装は用意してもらっているわけだが、如何せん年齢層が若すぎるのもあり、この場では浮いてしまっていること請け合いだった。
「だああぁ!おいミント、ソラ!俺はあのバカどもを少し自重させにいってくるからな!てめえ等は勝手にやってろ!」
「ええ。リサもほどほどに楽しんでくださいね〜」
「すでにこの会場に似つかわしくねぇ悲鳴と怒号が鳴り響いてやがる‥。今からやることを考えると実に憂鬱な気分だぜクソが」
そんな呟きを残し、最近になって肩まで伸ばし始めた髪を1度掻き上げたリサは、何かを覚悟した面持ちで、暴食暴走モードに陥っているラルとミラの元へと歩み寄っていった。
「‥‥リサ、良かったですよね。前より生き生きとしている気がします。きっといいきっかけがあったのだと思います」
「そうだねぇ。まさか女の子だったとは未だに信じられないところもあるけど、今となっちゃあれだけドレスが映える美人を、男性なんていう方が誰も信じちゃくれないだろうさ」
「ええ、その通りですね。ふふふ。同じ女性として嫉妬してしまいますよ」
「いやいや何をおっしゃいますやらミントちゃん。君を含めうちの女性メンバーは、この会場でも五指に入るくらいには綺麗所だと思ってるよ。いや贔屓目無しで」
「そうなのですか?まあ世辞と受け取っておきますね。ふふふ」
ミントちゃんは年齢に似合わない上品な笑顔を浮かべている。これに関しては全くもって本心意外なにものでもなかった。
ではでは、改めてになるが何故こんな状況に陥っているかというとだ。
それには、海の底より深い深い理由があったりするのである。




