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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
三章 俺の異世界転生は学園ラブコメもあるらしい
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季節が巡って


ーー春。


向こうの世界においての春といえば、学校では卒業式に入学式、会社では入社式など、一大イベントが一斉に執り行われる季節である。

そういう意味では、人生で大きなターニングポイントが訪れる時期の一つであると言っていい。


では、こちらの異世界においてはというと。

現在、俺の暮らしているここカッシフォードでは、長く続いた寒々しい季節を乗り越えた先に、ようやくと暖かい陽気が訪れていた。


カッシフォードの至る場所では木々や花々が次々と芽吹いており、鳥たちはあちらこちらで歌うようにさえずっている。これが春の訪れではないとしたら、逆に驚きがあるくらいだ。


ということは、こちらにも向こうの世界と同様に春夏秋冬が存在しているのか?

そんなふうにふと疑問に思った俺は、我らが宿り木亭の店長ことラザルのオッサンに訊ねてみることにした。


「はぁ?春夏秋冬だぁ?季節なんか気にしてる暇あったら仕事しやがれ」


結果的には答えも聞けずじまいで、さらには余計なゲンコツまでも頂いてしまっただけであった。そもそも聞く相手を間違えていたことに後悔する。

気を取り直して違う相手にもアタックしてみようと考える。


「…春夏秋冬ですか、そうですね。

季節というのは無情にも流れていってしまうものです。ですから、今という一瞬一瞬を大事にしていかなくてはならない…とは分かってはいるのですが、これがなかなかに難しいものです」


ミントちゃんは俺の問いかけに、どこか遠い目をしながらもそう答えてくれた。なんだか意図せずに、しみじみとさせてしまったようである。

とまあ、ミントちゃんの受け答えでなんとなく答えは出たような気もしていたが、ここまできたらせっかくだし皆にも春夏秋冬について聞いてみようと思う。


「春夏秋冬?なんだーそれ?

…あっ、わかったぜ!新しい必殺技の名前なんだな?そうなんだな!?俺はかっこいいと思うぜ!!」


「…春夏秋冬?詳しく教えてやってもいいが、見返りとして金貨一枚を俺に寄越すことだな」


「……新しいご飯?」


と、このように期待を裏切らない皆の反応に、お腹いっぱいの俺であった。


さて、今は午後の休憩時間であり、そろそろ仕事に戻らなくてはならない。

しかし、最後に一つ気持ちをリフレッシュさせたいなと思い立ち、宿り木亭の裏手の扉を開け、外に出る。


「うーん……今日も変わらずいい日になりそうだ」


全身を青一面の空に向かって思い切り伸ばす。

厨房に籠もってひたすら料理を作り上げるだけのサイボーグと化していた身体が、徐々に解れていく気がした。


「さあて後半戦も頑張りましょうかねぇ」


そんな独り言を残して店内へと戻っていく。

まあそんなわけで、身も心もすっかり異世界に染まった私ことソラは、今日も日常を精一杯に生きていたのだった。


ーー


「て、てててててて店長候補?!俺が?!?!」


「そうです」


宿り木亭の夜間営業タイムも終わりを告げ、翌日の仕込みや掃除に追われていた俺は、突然のミントちゃんのぶっ飛んだ提案に素っ頓狂な声を上げていた。


「…聞き間違いじゃないよね?」


「ええ。間違いなく。ソラさんには宿り木亭の店舗拡大に伴い、新店舗の支店長をやって貰えればと考えています」


そう話すミントちゃんは、いつものほんわかスマイルが似合う表情ではなく、至って真面目な面持ちをしている。

しかし俺は正直な話、向こうの世界でもそんな大それた経験は皆無である為、この話を素直に受け入れる自信がないのが本音のところであった。


そんな俺の戸惑った表情を見透かしたかのように、ミントちゃんは表情を少し和らげて話を続ける。


「大丈夫ですよソラさん。すぐにと言った話ではありませんよ。ふふ、その前に若者らしくしっかりと勉強してもらうつもりですから」


「ミントちゃん?その話にはミントちゃんの方が明らかに若者なんですよーはははなんていう矛盾点があるのもそうだし、何やら話がどんどん進んでいっている気がして怖いのですが…」


「ふふふ…気のせいですよ」


ミントちゃんの瞳が例のごとく怪しく輝いている。これは嫌な予感しかしないぞと俺の中の直感が告げていた。

しかし、ミントちゃんは突然と何かを思い出したかのような表情を浮かべ、話を切り替えるように口を開いた。


「あっ、そうです!その話は置いといてですね。ソラさんに別のご相談があったのですよ」


「相談?」


「はい。こちらも我ら宿り木亭にとって重大な案件となりますので、それを肝に銘じて心して聞いてくださいね?」


「えぇ。なんだか穏やかじゃないね…。怖くなってきたんだけど、出来れば聞かなくてもいいかな?」


「はははご冗談を」


ミントちゃんはこちらも例のごとく、顔は笑っているが目が笑っていない魔王のような表情を浮かべている。

こうなってしまっては大人しく話を聞くしかないと諦めた俺は、ミントちゃんから告げられた内容に、2度目の素っ頓狂な声を上げてしまうのだった。

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