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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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祝勝会と地雷


祝勝会が開演されて数時間経過し、宿り木亭のフロアでは依然としてソラたちが盛り上がりを見せていた。


その頃一方で厨房では、宿り木亭の店主であるラザルが1人、静かに酒瓶を前に佇んでいた。

そんなラザルは腰掛けている椅子に深く身体を預け、ひっそりと口を開いた。


「……ケッ。誰かと思ったらテメェら二人か。

てっきりキレイなネーチャンかと思って期待した俺が馬鹿だったか」


暗闇の中に向けて、身体を向けることもなくそんなことを呟くラザル。


そしてそこに音もなく姿を現したのは、カッシフォード騎士団3番隊隊長の肩書を持ったアインと、副隊長であるサラだった。

アインは軽く溜息を漏らす仕草を見せると、ラザルへと語りかける。


「へっ、相変わらずだなオッサン」


「うるせぇてめぇは消えとけ」


「ったく、いつでも素直じゃねーこと」


そこにサラが頭を下げ、騎士団特有の挨拶を挟んだ。


「…ご無沙汰しています。先生」


「ん?なんだサラか。そんな改まって畏まってんじゃねぇよ。


んで、どういった用件だ?いっとくがクソつまんねぇ昔話なんかを持ち出すんじゃねえぞ。せっかくの酒が不味くなる」


「まあそう言わずによ。

一応昔話ってわけじゃねーんだか、アンタの耳には入れときたい用件なんだ」


「ええ。貴方に聴いてもらわなければなりません。

……師父の最期を」


ーー


「そうか……ヤツは先に逝っちまったんだな」


「はい。師父らしい、潔い最後だったと思います」


「…お前さんがヤツの最期を?」


「ええ。正確に言うと違いますが、そのようなものです」


「…そうか。ありがとな。

アイツも浮かばれるだろうぜ。あっちでライナと仲良くやってるだろうよ」


「……はい」


アインはそこで、突然と二人の間に入り込むようにして身体を乗り出した。


「とまあ、辛気くせー話はこれまでにして、こいつで一杯やんねーか?」


アインはクシャッとした笑顔を見せると、懐から出した酒瓶を、片手で見せつけるように取り出す。

そのアインの様子にサラは、大きな溜息をつくようにして呆れた表情を浮かべた。


「……はぁ。貴方、こんなもの何処に忍ばせていたのですか?」


「おいおいー。んなことこの際どうでもいいじゃんかよー。昔みたいにたまには楽しくいこうぜ?

サラもこんな時ぐらい、少し羽目外せって」


「まったく。貴方という人は……一杯だけですからね?」


サラは両腕を組み、仕方がないといった表情を浮かべている。

しかし同時に、彼女の頬には少しばかりの微小が浮かんでいることも事実だった。


「へへっ。つーわけだオッサン。勝手にやらせてもらうぜ」


「チッ。俺の話を無視して勝手に話を続けやがって。

まあいい。それならとことん付き合ってもらおうじゃねーか。

なあサラ?」


「……は?」



ーー



一方、宿り木亭フロアにて。

壇上に再び上がったソラは、会場の皆に改めて宣言していた。


「えー静粛に静粛に。


皆様。宴もたけなわといったところでしょうか。

それもこれも、全ては私のおかげと思ってくれて結構です。ええ。

ではでは、そろそろいいお時間となってまいりました。

お開きとさせていただきたい所存で……」


そこまで話を進めていたソラのもとに、見知らぬ侵入者が突如襲撃する。

その女性は、やたらと色気のある胸元が大きく開いた格好で、ほんのりと顔を赤く高潮させながら、ソラへと擦り寄っていった。


「あれえぇ?まだ終わらせちゃいやよぉ?私まだ起きたばっかりなんだからぁ」


ソラはその真っ白な髪をした見知らぬ美女に内心で動揺を隠せず、惚けた表情を浮かべる。

しかし、頭を横にブンブンと振った後、残り少ない理性をフル回転させるようにして、司会者として最後まで徹しようと奮闘することにした。


「……お、おおっと!!!突然と見知らぬとんでもないレベルの美女が登場してまいりました!!


いいい、一体このあと、どどどどうなってしまうのか私わぁあ?!?!」


ソラは緊張から身体をピンと硬直させ、口だけが動くといった状況に陥っていた。

そんなソラの様子を見たサラは、さらに顔を赤らめ身体を震わせると、今度は突然と自らの豊満な胸を、ソラの顔を挟むようにして押し付け始めた。


「ええん?やだぁ。

嬉しい事を言ってくれるかわいい子がいるじゃなぁい?うふふ」


「…………っ?!?!この……感覚は……夢にまで見たあの………」


「ああんもうカワイイ〜。ほらぁ。もおぉっとオネェさんの胸で、夢を見てていいのよぉ??」


「もう一回………死んでもいい………」


まさに夢見心地といった表情を浮かべるソラ。

しかし、そんな彼に音もなく近づいた一人の少女がいることに、彼は気づくことはできなかった。


「……………」


その少女の表情は、決していつもと変わることはない。

しかし、ただただひたすらにソラとサラに対し視線を送り続けている。

そんな少女のもとに、ミントは見かねたといったように、慌てた様子で壇上に駆けつけていた。


「そ、ソラさん!いけません!!!」


「ふええ…なんだいミントちゅわぁん……ん?ミラ?」


夢見心地だったソラの瞳に、無感情の表情を浮かべたミラが映る。


「……………」


ミラはその場を音もなく後にする。

ソラはそこで急に我に返ったといったように、ハッとした表情を浮かべた。


「…………俺ってば、なにを?」


会場一体がやれやれといった空気に包まれる中、ミントは静かに口を開いた。


「……ソラさん、それはだめです」


続いてこの場に上がってきたリサも、すかさず合いの手を入れる。


「テメェってやつは…ほんと終わってるぜ」


「……………えっ?」


こうして、宿り木亭の初の祝勝会は、波乱の閉幕を迎えることとなったのだった。

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