表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
74/90

暫しのお別れ


昔々、あるところに。


おじいさんとおばあさんが住んでいました。


そのおじいさんは世界の均衡を守り、おばあさんはその手助けをしていました。


二人には一人息子がいましたが、その息子はある日突然、ニンゲンと結婚すると言って家を出ていってしまいました。


「こりゃあ大変だ、おばあさん」


「そうですね、おじいさん」


二人は懸命に息子を探しました。しかし、遂には見つかることはありませんでした。


そうして、月日が流れたある日のこと。


二人の家にはひょっこりと、かわいらしい赤ちゃんが置かれていました。

そして、その赤ちゃんの横には手紙が添えられています。


「私達の赤ちゃんです。後はよろしくお願いします」


その手紙にはそれだけが書いてありました。


「こりゃあ、なんとかしなきゃならんな。おばあさん」


「ええ、そうですねおじいさん」


二人はその赤ちゃんを大事に育てることにしました。


そうして、その赤ちゃんはすくすくと成長していき、無事大きくなることができました。


「おお、おばあさんや。めでたいのう」


「そうですねえ、おじいさん」


二人はその立派な姿に、涙して喜びました。


そんなある日、娘は二人に言いました。


「育ててくれて有り難う。それじゃ気に入らない生物を滅亡させる旅に出ます」


そう言ってその娘は旅立とうとしましたが、何故かその二人と周りの人達に止められてしまいました。


「どうして邪魔をするの?」


娘は納得できません。

すると、おじいさんが言いました。


「ちょっとニンゲンのところにでも行って、色々と勉強してきなさい」


娘はそれがとても嫌だったので、その場にいた者達全てを皆殺しにしようとしました。


しかし、結局力敵わずニンゲンのところに逝かされてしまいましたとさ。


めでたし、めでたし。



ーー



『天使』は自ら語り始めた物語をそう締め括り、自慢げな表情を浮かべた後、鼻高々といった様子でハイネへと振り返った。


「……ふふん、どうだ?我ながら面白可笑しくかつ、悲哀たっぷりに描けていると思うんだが」


「そうですね。その道のプロからしたら30点くらいでしょうか。だいぶおまけしてこれです」


ハイネの巫山戯た態度など一切ない、至って真面目な様子に、『天使』はびくりと身体を驚かせ、思わず口籠ってしまってしまっていた。


「クッ……テメェ……。

そ、そこまで俺に的確な酷評を下すとか、なかなか見所あるじゃねぇか」


「ははは。こんなクソみたいなものを褒めたら、それこそ貴女、私のこと本気で消滅させるでしょ?」


「…ぐぬぬぬ」


『天使』のその顔は真っ赤に染まり、身体はぷるぷると悔しさで震えている。


ところが次の瞬間。

そんな悔しさ滲ませていた『天使』の前でハイネは、突然と両足をガクガクと震わせ始めた。


「……申し訳ありません。痩せ我慢もどうやらこの辺が限界のようです。


恥ずかしながら私の身体は、貴女との対面にこれ以上堪えられないようです。

身体は正直とは良く言ったものですね」


そう告白したハイネの表情はとても険しいものとなっており、額には所々に冷や汗が滲んでいる。


『天使』はそんなハイネの様子に、一つ大きく溜息をついた。


「……はぁ。なんだか勝ち逃げされた気しかしねぇが、まあいいだろう。


テメェもめんどくせぇことに縛られてばかりじゃ、生ってヤツを謳歌出来ねぇぞ。

これは純粋な年長者からの忠告だ」


「……『大天使』様からの貴重なお言葉、大変有り難く受け取っておきます。それでは、失礼」


「ケッ、五月蝿せぇさっさと逝っちまえ」


『天使』が虫を払うような仕草を見せると、忽然とハイネの姿は消え失せてしまった。


そうして『天使』は改めて口を開く。


「さあて、興もすっかりと醒めちまったところで……どうやら俺もそろそろみてぇだな。


おい、ミラ!」


『天使』は唐突にミラへと身体を振り向き、呼びかけていた。


「…………」


ミラは『天使』の呼びかけにも、サラへの治療の手を休めることはない。

しかし、『天使』はそんなミラの様子にニヤリと口元を吊上げ、話を続ける。


「まだまだ無能なくせして、口だけは達者なクソガキを頼んだぜ。

一応、俺の器担ってんだ。今はゴミカスだが、テメェが鍛えてやりゃあそこそこ役に立つはずだせ?


正直テメェらのクソみてぇなやり取りを見てるだけで、何かと退屈はしなかった。

このまま消えてやるっつーのも悪くねぇくらいには、居心地が良かったことも認めてやる。


……だが。

俺様がこうして外に出られるようになったとしたら、話は別だ。


俺は俺が一番だからな。俺がやりたいことしかやらねぇに決まってる」


「……………」


「へへっ。つーわけで、まあ今回はこれくらいで勘弁してやんぜ。


次に俺が出てきたときは、このクソみてぇな世の仕組みを余すことなく塵に換えてやるから、覚えとけや。


……テメェがそれを止めようってんなら、容赦しねぇぜ?」


そう言った『天使』は、実に清々しいといった笑顔を浮かべ、分解されるように空へ昇天していった。


そうしてその場に遺されたのは、優しくも無慈悲な『光』の残影と、横たわる少年の姿のみであったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ