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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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天使


『天使』が降臨し、場には一時的な静けさが舞い降りていた。

しかしその静寂は、突如として破られることとなる。


「ガアああああああああああああああああ!!!」


獣の咆哮のように解き放たれたユベールの叫びが、辺り一面に響き渡る。


そしてその直後。

ユベールは両腕を前に突き出すようにして構え、『黒炎』を生成する。


これまでの黒炎よりも更に大きさと質量を増したそれは、次の瞬間『天使』に向かって爆発的に解き放たれた。


しかし、結果的にそれは決して『天使』に届くことはなく、途中で呆気なく分解されるように塵となって消失してしまう。


「っ?!?!」


驚愕の表情を浮かべるユベール。


しかし『天使』は、そんなユベールに対し軽く視線を向けた後、実に愉快といった表情を浮かべ、語りかけた。


「……おっ。なんだテメェ、洒落たもん使ってんじゃねーか?実にかっけぇな。羨ましいぜ。


つーか……はぁ……。

俺もそっち方面が性に合ってるっつーのに、こんなクソダセェもんしか出すことが出来ねぇとは……情けねぇことこの上ねぇ」


『天使』は心底残念といったように、肩をガクリと下げ、落ち込んだ様子を見せる。


しかし一方のユベールは、渾身の黒炎がいともたやすく消失してしまったことに対し、最大級の屈辱に塗れる感情を受けていた。


そんなユベールの顔は怒りで大きく歪んでおり、額には所々に青筋が浮かぶ。

また、その身体は怒りに耐え兼ねるといったように、小刻みに震えている。


「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」


先程よりも、一際大きな叫び声が鳴り響く。

そして、ユベールは両腕を天に高く突き出すように振り上げた。


すると彼の両手の先には、先程も生成したのと同様の『黒炎』が再びと浮かび上がってくる。


しかしその黒炎は、先程のものとは規模感がまるで違っていた。


この空間に突如として黒い太陽が現れたような、そんな感覚に陥る程の質量の大きさに、それを見上げていた『天使』は、思わずといったように口元を吊り上げる。


「…おうおう。その調子じゃ命賭けってとこか?面白え」


ユベールの身体には現在、異変が起きていた。


ユベールの身体全身には血管が浮かび上がり、それらは高波のようにドクドクと波打ち沸騰している。

また、その両眼は毛細血管が切れたことにより真っ赤に染まり、もはや視力などとうに失ってしまっていた。


しかし。

もはやユベールにとって、自分自身を含め、全てがどうでも良い事だった。


この時のユベールの心内にあったのは、ただ目の前の不快なものを排除したいという気持ちのみであり、それは人間であった頃の彼でさえついには持つことはなかった、ある意味純粋な心を宿した瞬間でもあった。


「ゼ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛だ゛い゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!!!!!!


あ゛い゛た゛ち゛ち゛ち゛ち゛ち゛た゛ご゛ろ゛し゛て゛え゛え゛え゛け゛け゛け゛け゛や゛あ゛あ゛あ゛る゛う゛う゛う゛か゛う゛う゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」


ユベールの叫びはもはや、言葉などではなく、魂の音に近いものとなっていた。


そうして、ユベールのすべてとも言える『黒炎玉』が、今まさに『天使』へと降り注ぐ。


そんな状況下で『天使』は、俯かせていた顔を上げ、目を見開く。


「クククッ…………はははははははははははははははは!!!!


テメェってやつは、最期の最後でクッソ愉快な馬鹿だったぜ?

俺だけはそれを覚えててやる。


……つーわけで、盛大に爆ぜとけやぁ!!!!」



『天使』が片腕を上げ、その掌を降り注ぐ『黒炎玉』に向ける。


次の瞬間、巨大な『黒炎玉』は嘘のように崩壊を始め、遂には全てが元から無かったものかのように、サラサラと光の塵となった。


それと同時に、先程まで確かにこの場に存在していたユベールも、この場から忽然と消失していった。



「…………チッ」



『天使』は、眉間にシワを寄せながら自らの片手を見つめ、小さく舌打ちをする。


『天使』は、絶対的な『光』の力を有していた。


しかし、彼女は自らの絶対的な力にこれまでも、そして恐らくこれからも、決して満足することはない。


彼女にとって神々しい光など、ただの忌々しい戒めであり、このようにあっけなく相手を塵に変えてしまう味気なさも含め、全てが自分にとって嫌悪感に繋がるものと気づいていたからだ。



「……クッソつまんねぇ」



『天使』は独り、そっとそんなことを呟いたのだった。


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