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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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前奏


「……では、今回の私めの役割はこれで終わったようですね」


ハイネはそう言葉にした後、ゆっくりと炎魔人と化したユベールへと近づいていった。

そうしてハイネは、耳元にそっと何かを囁く。


すると、それまで操り人形かのように動きを止めていたユベールに、ようやくと反応がみられた。


「……」


無表情のまま少し顔を頷けたユベールは、こちらに向けていた腕を降ろす。


「うんうん。それでは私は、再びゆるりと観戦させて貰いますね。それではー」


ハイネは満面の笑みを浮かべそんなことを口にし、その場を後にする。


俺はもはや見慣れてしまったと言っていい、ハイネの人を小馬鹿にするような態度を無視するように、密かに『水』防御壁の展開準備を進めていた。

その上で、ユベールへと探りを入れる意味合いを込め、語りかける。


「やっとテメェが望んでいた一対一の状況になれたわけだが、感想はどんなだ?」


「………」


ユベールはそんな俺の話に完全に無視を決め込むように、全くと反応する事はなかった。

そして、奴はおもむろに挙げた片腕の掌を上に向けるようにして構え、そちらにじっと視線を向けている。


すると奴の掌の上に、小さな火の塊が浮かび上がってきた。


「………」


自分で行ったことに、少し驚いたような表情を見せる炎魔人ユベールは、その後もいつかのミラの実践講義を彷彿とさせるかのように、次々とその火の形や大きさ、色などを変化させ始めた。


その様子はまるで児戯に熱中する子どものようで、以前の貴族らしい嫌みに溢れたものとは違い、そこには無邪気で純粋な感情が見え隠れしているように見えた。


しかし、次の瞬間。

そんなユベールの己の力を測るかのような行為は、唐突に終わりを迎えることとなる。


その訪れは、ユベールが遊戯に飽きてしまったかの如く、元の無表情に戻った時と同時の事だった。


「………っ?」


俺の背筋を突如、ゾクリとした悪寒が襲いかかる。

何かがくると、そう直感が告げていた。


「………」


ユベールは、相変わらず言葉を発することもなく、右手の人差し指だけをこちらに向けた。


そしてそれを皮切りに、ついに灼熱地獄が開演する。

ユベールの指先からは、俺の頭くらいの大きさはある真っ赤な爆炎の塊が次々と生成され、それらは一つ一つが我先にといったように、次々と俺の元へと殺到してきた。


「っ?!?!」


こんなもの、回避など間に合うはずもない。

それ程までにその爆炎の塊は、恐るべき速度を伴っており、俺の身体能力では決して処理できない領域に至っていた。


だがその数々の爆炎の塊は、幸いなことにどれも俺の身体に届くことはなかった。

 

その全てはこちらに届く前に、俺が事前に展開しておいた『水』の防御壁に阻まれる形で、次々と蒸発していく。


「……へっ、肝が冷えっぱなしとは、このことだぜ……」


依然として続く相手の猛攻を防ぎながらも、俺はそんな軽口を呟く。

その事で、無理やりと心に若干の余裕を持たせるよう意識する。


…問題は、ここからだ。

なんとか攻撃に転ずる方法を考えなければ、このまま防戦一方にしかならない。


「やってみるしか………ねぇ!!!」


現段階の奴の火炎魔法は、己指数『50』の『水』防御壁で対処できている。

であるならばと、残りの魔法力を駆使し、右手と左手の先に、新たな魔法を展開し始める。


それは、今まで何度も挑戦し挫折してきた、『氷』魔法への挑戦だった。


そもそも高度な温度調整など緻密な計算が必要となる『氷』を生成する事自体が上級魔法指定を受けているもので、ミラの指南書の中で説明があった通り、そう簡単に出来る事ではない。

その意味でもサラが化物じみていたのは言うまでもなかった。


俺自身の実力の段階は、そこに取り組む段階にはいるものの、まだまだ訓練途中といった所であり、実践投入する程完成してはいない。


だが幸運なことに、サラが俺に『氷』魔法の行使方法など散々な形で披露してくれたおかげで、自分の中でもより濃密に身になった感覚があった。


ここでやれなきゃ、いつやるんだ?

とにかく俺は、簡単に死んでやるわけにはいかねぇんだ。


そうして俺は、初めて成功した『氷』魔法の感覚の手応えと共に、今後の戦略を頭に巡らせながら小さく呟く。


「………さて、ここからがお愉しみだせ?炎魔人さんよ」

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