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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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黒幕


「ふふっ、あははははははははぁ!!!」



「ガァアアアアアアアアアアアア!!!!」



氷と岩。



その2つの質量のぶつかり合いが、この空間を全て押し潰すかのように展開されていた。


だがそうした中でついに、戦局が動き出す。


「ウ、ウガァアアアアアアアアアアアア!!!!!」


その生物の獣の如き咆哮をキッカケに、今までと比べ数段と質量を増した岩塊が生成されていく。


「………ふふふっ、あはっ!!あはははははははははぁ!!!!」


サラも、それにすぐに対応するかのように、氷塊を一段と肥大化させる。


こうして、さらなる強大な魔法のぶつかり合いが展開されていくかに見えた。


だが、その時。

それまでまるでこの状況が愉しくてしょうがないといった笑い声を上げていたサラが、突然表情を変えるようにして口を開く。


「…ごめんなさいねぇ?女って飽きっぽくて、気まぐれなの」


「ッ!?!?」


次の瞬間。

岩塊から突如現れた鋭利な氷柱が、男性の腹を抉り取るように深々と突き刺さっていた。


「……ガ、ガハァッ?!」


男性は堪らず血反吐を撒き散らす。


その氷柱は勢いを留めることはなく、その生物を伴って背後にある壁にまで一直線に伸びていく。

そして最後は、そのまま壁に激しく衝突してしまった。


「ゴフッッ…………」


衝突による轟音が一面に鳴り響く。

その勢いは凄まじく、生物の身体の衝突によって、壁自体も抉り取られてしまっていた。


辺りを岩や氷の破片が飛散し、壁への衝突時に生まれた土煙が辺りの景色を覆い隠すように包み込む。


そうして暫くした後、ようやくと引いてきた土煙と共に、ゆっくりと生物の姿が顕わになっていく。


そこにはサラの生成した氷柱によって、まるで標本のように貼り付けにされた格好の生物がいた。


その上半身を司る男性の口元が、微かに揺れ動く。


「………あ…………が…………………う………」


頬に一筋の涙が伝う。

その表情は、その無惨すぎる格好とは正反対に、安らかなものとなっていたのだった。



ーー



「決着がついた…のか?」


少年は、その驚くべき光景に未だ実感を持てないといった感情を滲ませながら、言葉を漏らす。


「…ふむ。成程。


恐らくですが彼女はあの瞬間、岩塊に対抗する程の氷塊を展開しながら、同時に氷塊の一部を水流へと変えていた。

そうして、それを岩塊の中に密かに伝わせるようにして、改めて氷柱を生成し彼を貫いた…と。


…うーん、口で言うのは簡単ですが、実にとんでもないことをするもんですねぇ。


魔法の真髄に到達しうる者でなければ、到底出来ない芸当です。

いやぁ、非常に良いものが見れました。眼福眼福」


その男は微笑を浮かべながら、しきりに関心するように頷いていた。

その様子を見た少年が、男にジトっとした視線を向ける。


「…んで、そんな聴いてもねぇ能書きを勝手に垂れているテメぇは、晴れて俺たちと敵対できるってわけだよな?」


「………」


少年とミラはそれを合図とするように、互いにその男から離れ、距離を置いた。

男はそんな二人の様子に、右手を頭の後ろに添え、


「ははは、やだなぁ。さっきも言ったじゃないですかぁ。私なんかただの雑魚ですよ?相手しても面白くもなんともないんですって」


「…なあミラ。存在自体が物凄く鬱陶しくて苛々するっていう、ごく私的な理由で殺っちゃっていいか?」


「………どうぞ」


「ひ、ひいぃ!それってひょっとしなくても私のことですっ?!や、止めてぇ?!」


男は身体を震わせながら心底怯えきった声を上げ、二人がいた場所から踵を返すようにして、背後を向ける。


すると突然、ちょうど反対側の壁に向けて、全速力といったように走り始めた。


その男性のあまりにも情けない様子に、これまでの緊張感が一気に薄れてしまった少年は、一度大きく溜息をつく。


「はあ…。ったく、拍子抜けしちまいそうだが、落とし前はきっちりつけなきゃな…。


というわけで、待てやゴラァぁ!!」


緩みそうになった空気感を再び引き締めるように、少年も男性を追い詰めようと駆け出していく。


「お、お助けぇぇぇえええぇぇ!!!


……………………っ!?」




が、その途中。

何故か突然吹き飛ぶようにして、男の身体が床に転がってしまった。


「…っ!?なんだ……?」


咄嗟の出来事に、追いかけていた少年の脚が止まる。


「いっ痛たたっ……………」


白衣の男が、右頰を抑えるようにして転がった身体をゆっくりと起こす。

そうしてようやくと事態を把握したその男の表情は、驚きに満ちたものに変わっていく。


「だ、男爵様!?どうしてこちらに!?」


そこには、突如として現れた一人の男が立ち尽くしていた。


その身なりはまさに、上流階級にしか許されぬ高級感溢れるものである。

赤を基調にしたその紳士服には、細かな刺繍が施してあり、仕立てしたものを卸したばかりといった清潔感が見受けられる。


また、髪型は金髪を両側で巻くようにカールさせており、鼻が高く、彫りの深い顔が印象的な男であった。


「……余をこんなにも待たせた挙げ句、このような醜態を晒しおって。決して赦さんぞ」


その男は、まるで道端のゴミを見るかのような侮蔑に満ちた視線を、白衣の男に向けるのだった。

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