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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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決着


「どうした!もう終わりか?!俺をもっと楽しませてみろよ?!」


男はようやくエンジンが掛かってきたかのように、二人に向かって声を張り上げる。

一方、男によって吹き飛ばされる形となったソラとラルは、改めて体勢を整えようとしていた。


「あの野郎、殴っても蹴ってもまるで手応えがねぇ。こっちは全力でやってるっつーのに」


「お前の攻撃の速さ自体は、決してアイツに引けを取っていない筈だ。

だが、如何せんガキの身体じゃ一つ一つの攻撃が軽すぎるのかもしれない。こりゃあ闇雲にやっててもアイツには敵わないかもな」


「げぇ。じゃあどうしたらいいんだよ…」


ラルは思わず頭を抱えてしまう。

ソラの方も、この状況に打開策を見つけようと頭を捻っていた。

暫くしてソラは、何かを閃いたとばかりにパッと顔を上げる。


「あっ…まてよ。アレならもしかして……」


「あれって……ま、まさかアレのことか!?あんなん遊びでやってたもんだろ?!」


「いや、やり方次第じゃこの状況を打破できる可能性は充分にある。

というか、現状俺たちにとってアイツに通用しそうなのはアレくらいしかないだろう」


ソラの瞳に、確かな希望の光が灯り始めていた。


「…もし、それも通用しなかったら?」


「1、アイツに一泡吹かせられず、逆に俺たちがボコボコにされる。2、アイツは刑務所に行っちまって、当分の間は仕返しできなくなる。

こんなところか?」


「冗談じゃねえ」 


ラルの瞳に再び炎が宿り、みるみると闘志が漲っていく。そんな様子に、ソラはふっと笑みを零し、ラルの頭を鷲掴みするようにして男を正面に見据えた。


「となりゃ、話は簡単だ。この作戦に俺たちの全てをかけるぞ」


「やってやらあ。兄ちゃんの事だから、作戦の方もバッチリなんだろ?」


「あるにはあるんだが、我ながら無茶な作戦だ。まあ俺の頭で考えつくのはこれくらいが限界だ。そこは我慢してくれよ?

さて、時間もないからな。手短に話す。まずは…」



「随分と二人で話し込みやがって。いっちょ前に対策でも立ててやがったか?まあ、何をやっても無駄だと思うがな」


男は片腕を廻しながら、ゆっくりと歩を進めていた。

ソラはそんな男に対峙し、若干緊張した面持ちを浮かべながら答える。


「…お前のその余裕、きっちり後悔させてやるぜ?」


「ほざけ」


男の身体から、闘気ともいえるオーラが一気に溢れ出す。それと同時に、圧倒的な暴力の塊がソラに襲いかかろうとしていた。

男は身体中の筋肉を躍動させ、あっという間にソラの真正面へと姿を現す。 


「ハッッッッッッッ!!」


手始めとばかりに、格闘技の見本かのような正拳突きをソラの下腹部に見舞う。


「ぐふっっっ?!」


ソラが悶絶した表情を浮かべ、胃から込み上げた透明の液体が、口から飛散する。

しかし、男がそれで手を緩めることはない。


「シッッッッッ!」


続けてソラの顎を、遥か下方から鋭い掌底で衝き上げた。衝撃と共に、ソラの身体が僅かに宙に浮かぶような格好になる。

すかさず男は、先程のラルを模倣するように、さらにスピードと重さが洗練された回し蹴りを繰り出した。


それはソラの顔の側面に直撃し、地面に衝突してからも滑るように後方へ転がっていった。

ようやくと牢屋に激突する形で止まったソラは、一度身体をぴくりと痙攣させると、それきり動かなくなってしまった。

男はその様子を、なんの感情もないかのような表情を浮かべ眺めている。


「…つい興が乗っちまった。全くのド素人とはな」


男は、あの時交わした成約を思い返していた。

それは、お互いの殺生は禁止という、絶対的な強者が定めたルールである。


男の長年の戦闘経験と勘が言っていた。

ある程度加減をしていたとはいえ、あのように急所を的確についた打撃を繰り出してしまっては、もはやソラは無事では済まないということを。


「ちっ……」


男が自分の失態に思わず舌を鳴らした、ちょうどその時の事だった。

突如として男の背後に、巨大な風の奔流が現れる。

男はすぐさま振り返ると、そこにはラルが先程よりも一周り大きな暴風を纏った状態で待ち構えていた。


「………くらえええええええぇえええ!!!」


ラルの一撃は、先程見せた連続攻撃とは全くの別物だった。

それは連撃を捨て、一撃の威力を最大限にまで高めた事で初めて生まれる、必殺の拳。

風というより台風に近い猛威を振るうラルの拳と共に、男へと一直線に吹き荒れていく。


「…まあ、そんなところだろうな」


「っ?!」


ラルがその事に気づいたときには、もはや全てが手遅れだった。

ラルの渾身の一撃は、男によって事前に全て見透かされていたように、反対にカウンターとなって放たれた男の硬い拳が、ラルの腹部を抉るようにめり込んでいた。


「がはっ………」


ラルは堪らず、血反吐を吐き出す。


「…狙いは良かった。だが、やはり甘い」


男はそのままの勢いで拳を上に振り抜き、ラルの身体は掬い上げられるように宙を舞う。

そうして激しい衝突音と共に、無造作に地面へと叩きつけられてしまった。

その後も、ラルの身体はピクリとも動く気配はない。


「真剣勝負だ。悪く思うなよ」


男は懐から葉巻を取り出し、一息付いた後に独り呟くのだった。

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