それぞれの戦い
時間は遡り、ちょうどサラ達が地下を攻略し始めた頃合いの刻。
ソラとラルは、サラ達とは違うもう一つの戦いに臨もうとしていた。
〜~
「なあ、ソラ兄ちゃん。今回は前みたいに作戦とかあんのか?」
「いや、すまん。今回に限っては全くのノープランだ。つまり考え無しってやつな」
「ふん、むしろ上等だぜ。じゃあ俺から仕掛けていいか?」
「ああ。お前のありったけでぶちかましてこい」
「へへっ、修行の成果を見せてくるぜ」
二人は短く言葉を交わし、ラルが男の前に一人身を乗り出す。その姿を前にした男は、意外といった表情を浮かべている。
「…あぁ?忠告してやったっつーのに、テメエ一人でくるってか?どうやら早死にしてぇらしいな」
「ヘっ、そっちこそ舐めてっと痛い目見るぜ?」
ラルはそう口にすると、自らの身体にスイッチを入れるかのように、腰を深く落とし構えた。
「……っはああぁああああああ!!」
十二分に気合いの入った掛け声と共に、猛烈な風がラルの身体の廻りを吹き荒れ始める。
ラルはその風をまるで全て支配するかのように、身体に纏いだした。
「だあぁあああああああ!!!」
ラルは風の加護を得たことで生まれた、爆発的な加速スピードで一気に飛び出だしたことで、男との距離を一気に縮めていく。
そうやって猛烈なスピードから繰り出されたラルの右拳が、男の右頬に炸裂した。
「はああぁああああ!!」
ラルの猛攻はそれだけで止まることを知らない。
凄まじい速度の拳や蹴りが、次々と男に襲いかかっていく。
「これで、終わりだああぁああ!!」
トドメとばかりにラルは、自分の身体を軸にし、風の力を遠心力として利用した、恐ろしい疾さを誇る回し蹴りを放った。
それは、絶対不可避の攻撃となり、男を薙ぎ倒す。
確かにその筈だった。
「…ほう。ガキにしてはなかなかじゃねーか。手を使う予定はなかったんだがな」
「っ!?」
「ほらよっ、返すぜ!!」
ラルの渾身の回し蹴りは、男の手によって安々と塞がれてしまい、逆に足首を取られてしまう格好になる。結果、ラルはその剛腕によって軽々と放り投げられてしまった。
「うおおぉおおっ!?」
ソラは放り投げられたラルを、かろうじて受け止める。
しかし、やはりその勢いを全て殺すことは出来ず、二人揃って後ろに弾き飛ばされてしまった。
「…つうぅ……。すまねぇ…ソラ兄ちゃん」
「…い、いいってことよ。それより、まだまだこれからだってとこ、見せなきゃな?」
「ああ…まだまだこれからだぜ」
二人は改めて視線を交わし、立ち上がる。
二人の瞳には、未だ諦めることを知らない闘志の火が宿っていた。
「…クックック。そうでなきゃ面白くねぇ」
男はそんな二人をまるで歓迎するかのように、嬉しそうに笑うのだった。




