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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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辿り着いた先に


決して少なくない魔獣の群れをあっという間に退けたサラは、息をつく間もなく次の扉を開こうとしていた。


そこに遅れまいと必死に追いついた俺は、思わず声をかける。


「…お前、少し休んだりしなくて平気なのかよ?」


「お気遣い有難うございます。大丈夫です」


そう答えたサラは、薄っすらと額に汗を滲ませている。

多少の無理をしてでも、今は一刻を争うと判断したのだろう。

俺はそんなサラの決断に、無言で頷くことで応えることにした。


そうしてすぐに次の扉を開けると、今度は一見して実験室のような部屋に出る。


その部屋の中心部には、人が三人分は入る程の大きさの寝台があり、その四方には手足を拘束する用途と思われる分厚い鉄鎖があった。

また辺りを見渡してみると、壁には形や種類が様々である刃物が、一面に立て掛けてあるのが分かる。


先程の部屋で見た生物の事を考えると、ここにある道具がロクでもない使い方をされていることを、嫌でも予想出来てしまった。


「…いい加減うんざりしてきたぜ。ここは本当に地下なのか?これだけ広い空間が拡がってんのは、どう考えたっておかしいだろうがよ」


「それも含めて、黒幕とやらには全て吐いてもらうことにしましょう」


「…っておい!待てって!」


もはやサラも、部屋の事を気にしている時間すら惜しいといったように、早々にここを離れようとしていた。


そうして、サラに急かされるように足早に次の部屋に入った瞬間。

俺は今迄とは随分と毛色の違う部屋の雰囲気に、思わずはっとしてしまう。


その部屋には取り囲むようにずらりと本棚が並んでおり、鼻につくような独特な紙の匂いが充満している。


そんな部屋の中心部には、小さな机と椅子が配置されており、そこには一人の男が座して本を読んでいるようだった。


その白衣を纏った男は、暫くした後に俺達の存在にようやくと気づいたようで、読んでいた本の頁を広げるようにして、机にそっと置いた。


「…おや。こんなところまでご苦労様です」


柔らかな微笑を浮かべ、落ち着いた様子で語りかけてくるその姿は、まるで友人同士の何気ない挨拶かのようだった。


さらに俺は、その男が最近出会った人物と一致している事に気づき、改めて驚愕する。


「なっ…てめえは…」


今俺の目の前にいる男は、あの時宿り木亭にラルの容態を診察しに来た、医者を名乗る人物に他ならない。


「はて、そちらの方とは何処かでお会いしたことでもありましたか?」


不思議そうに首を傾げるその男。

その態度に思わず声を荒らげようとする俺を、横にいたサラがすぐに手を伸ばして諌めていた。


「くっ…」


「落ち着いてください。相手の調子に合わせてはいけませんよ?


…では、貴方。今回の一連の事件は貴方の仕業でしょうか?

そうなのでしたら余計な抵抗は即刻辞め、さっさと降伏することをお勧めします。如何ですか?」


サラは俺に忠告をするのとほぼ同時に、男との距離を縮める。

その余りの身のこなしの速さに驚いていたのも束の間、気がつくと男の首元には、サラの手から生成された円錐形の氷柱が突き付けられていた。


「…ふむ。これは困りましたね」


この状況でもその男は、貼り付いたような笑顔を浮かべ続けている。

その姿は、この男の無気味さを更に際立たせていたのだった。

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