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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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リベンジ


無事ラルのお母さんの救出という一番の目的を果たすことができたことで、自然と俺達の間には緩んだ空気が流れ始めていた。


しかしそんな宿り木亭メンバーとは正反対に、サラさんは依然としてより厳しい表情を浮かべている。


「では約束通り、今回の一連の事件の黒幕についてお聞かせ願いましょうか?」


改めてサラさんは、鋭い眼光を向けてその男に尋ねる。


男はそれを受けて椅子から静かに立ち上がると、一見するとただの壁にしか見えない通路の一角に移動した。


「…依頼主は、この奥にいるはずだ」


男がその通路の一角の壁を軽く押すようにすると、まるで忍者屋敷かのようにゆっくりと隠された扉が開く。


「言っておくが、俺も依頼主について知っている事は少ねぇ。そういう契約だったしな。ただ俺とゴーツの役割は、攫ってきた女達をここで監禁することだけだった。そいつらがその後どうなって行くのかも知らん」


要するにやはりこの男はただの実行犯であり、今回の一連の首謀者は黒幕にあるということだろう。


ここ以外にも複数の拠点を構えている事を考えると、自分の居場所を特定させにくくするといった意図も含め、この黒幕の底知れない狡猾さが伺える。


それにしても直接手を下さず人を介して犯行を行うというやり方は、実に金を持っている権力者がやりそうな手口だった。


「…話は分かりました。後は中にいる黒幕とやらに話を聞くことにしましょう。今更貴方が嘘をつくこともないでしょうし」


「悪いが、そうしてくれ」


その男は再び座っていた椅子まで戻ると、落ち着いた様子で腰掛けた。


「分かっているとは思いますが、この後貴方は上にいる男と共に城で尋問を受け、収監される事になるでしょう」


「ああ。…ゴーツの奴も生きてんのか?」


「私の氷は身体の自由を奪う程度に調整しています。運が良ければ生きているのではないですか?」


「そうか…」


男は表情を変えず、そうとだけ返事をしていた。


「では貴方には…そうですね。暫くこの牢屋にでも入って、大人しくしていてもらいましょう」


「ああ。そうさせてもらうさ」


男はその場から立ち上がり、ポケットに両手を突っ込みながら牢屋の中に入っていった。

すると、その男はすぐにくつろぐかのような体勢で仰向けになってしまった。


「しっかり鍵かけておけよ?これからゆっくり一眠りさせてもらうんだからな。邪魔されちゃ困る」


そんな男の様子に軽く溜息をついたサラさんは、再び緩みそうになった雰囲気を締め直すように宣言する。


「では、さらに中に進むとしましょう」


サラさんのその言葉に、早速と皆で移動をしようとしていたその最中、ラルは一人浮かない表情を浮かべていた。


「…ラル?」


俺が声をかけるのとほぼ同時に、ラルは意を決したように顔を上げる。


「すまねぇみんな。俺、やっぱりアイツを許せない。一発ぶん殴ってやらなきゃどうしても気が済まないんだ」


そう言ったラルは突然、牢屋の方に走り出す。

すると、あっという間に男がいる牢屋に入ってしまった。


「へへっ。自分の決着はちゃんと自分でつけちまうから、皆は先に進んでくれ。鍵も閉めてくれよな?」


ラルは今回のことに自分なりにケリをつけることにしたのだろう。

その表情には決意の固さが滲んでいるのが分かる。

しかし、そこに敢えて俺は口を挟んでいた。


「…そういうことなら、俺も黙ってられないな。悪いが借りがあるのは俺も同じでね」


「ソ、ソラ兄ちゃん?!」


「サラさん。勝手なこと言ってすみませんが、そういうことでお願い出来ませんか?」


そんな俺の提案に、サラさんは何度目になるかわからない溜め息をつく。


「まったく、貴方達ときたら…。…まあいいでしょう。ただし、いくつか条件を出しますので、それを遵守してもらいます」


「条件?」


俺は思わずサラさんの言葉に、反応を見せてしまっていた。

そんな俺に視線だけを向けるようにして、サラさんは応える。


「まず、当然のことながら貴方達には牢屋の中でやり合ってもらいます。あの方にはまだ聞きたいことも残っておりますので、互いに殺傷するのも禁止です。後は私がここに戻って来るまで、どうぞお好きになさってください」


「おいおい!黙って聞いてたら俺の意思は無視ってか?冗談じゃねえぜ、めんどくせえ」


牢屋の中で話を聴いていたその男は、自分が関わっていることが分かると、慌てて口を挟んできた。


「そんなことは私の知ったことではありません」


「おいおい…」


男はうんざりした様子で、力なく呟く。

そうしてサラさんは、すぐに切り替えるようにして、そこにいた少年に向かって声を掛けていた。


「それでは、貴方はどういたしますか?」


「たく馬鹿どもには付き合ってらんねーぜ。俺はアンタと一緒に行かせて貰うぜ?」


少年の返答が少し意外だったのか、サラさんは少し間を置いて問い直した。


「…よろしいのですか?」


「ふん。個人的にも今回の一連の事件をどんな奴が企てやがったのか、気になる所ではあるしな。後は単純にソラとの契約もある」


少年は腕を組みながらそう話すと、それを受けたサラさんは、それならとすぐに納得したようだった。


「分かりました。では早速出発致しましょう」



「やれやれ。お前ら今更だが久しぶりだな。その調子だと、あの時と比べて大分ましになったじゃねえか?


…で、本気でやるつもりなのか?なんなら一緒にお昼寝するのでも俺は一向に構わねえんだけどな」


男は気怠そうに身体を無理やり起こすと、俺たちに対してそう告げていた。


「こちとら、生憎とそういうわけにはいかねえんだよ。あん時は惨めにボコボコにされちまったけど、今回はそうはいかねぇ」


「ああ。目にもの見せてやる」


俺たちは意気揚々に男に敵意を向ける。

しかし、そんな俺達の様子にもその男は余裕の仕草を見せ続けていた。


「…まあ聞け。これでも、昔とある流派にいたことがあってな。退屈でさっさと辞めちまったが、おかげで今でも腕には自信がある」


一変して、辺りの空気感がピリついたようにざわめく感覚があった。

男は先程までと違い、鋭い眼光をこちらに向けている。

それはまるでオーラを放っているかのように俺達を貫いていた。


「ふう……はあああ」


男はゆっくりと一度大きく息を吸い、それを吐き出す。


すると、身体のあらゆる部位の筋肉が、嘘のように一段と膨れ上がっていった。

今の男の身体つきは、宿り木亭のオッサン以上に変わっている。


そして男は、最後の警告とばかりに俺たちに告げた。


「正直、お前ら二人でここに来たのは正解だったよ。何せ、一人じゃ準備運動にもならなそうだ。

言っておくが、こうなっちまったからには俺も手加減出来ねぇ。


…軽く捻り潰してやるからかかってこい」


こうしていよいよ、俺とラルはリベンジの時を迎えたのだった。

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