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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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とある悪党の独り言


人間とは結局、死ぬために生きてるようなものだ。


そんな生に対して、普通の人間ってのはそれなりに輝きを見出すのであろう。

以前の俺がそうであったように。

ではその輝きを無くした時、人はどうしたらいい?


それなら、人生を終わらせる為に自殺すればいい。

確かにそれも一つの解決手段になるだろう。

しかしそれを行うには、やはり苦痛からは逃れられない。では、その苦痛すら御免被りたい人間はいったいどうするのか。


答えは簡単だ。

要するに、死んでるように生きればいい。


考えることを辞め、とにかく毎日美味い飯を食って、良い女を抱いて、適当に生きる。

最後は楽に死ねればそれでいい。


成程。そう考えると、人生ってやつは実に良く出来ているーー。


□□□□□


「兄貴、そろそろ飯にしやせんか?俺腹減っちまって」


「…おう」


俺は椅子に背中を押し付けるように座り、ゴーツの提案に適当に相槌を打つ。

内心で考え事をしていたせいで、気もそぞろになってしまっていることも自分自身で気づいていた。


「へへっ。何食おうかな」


ゴーツの奴が、何か食い物は無いかと奥の部屋に消えようとする。


「おいゴーツ。待て」


「はい?なんっすか」


「先に下の奴らだ」


「ええっ?奴らすか?いや俺、腹減ってんすけど」


「あ?大事な商品よりお前の空腹を優先させる訳があるか?」


「…すみませんっす」


「チッ…」


俺は何をしていても襲ってくる、理由がつかない苛立ちの感情を抑えきれずにいた。



ここトリニータは、俺たちのような悪党が隠れ家とするには絶好の環境が整っている。


王国の奴等もこの一帯に関しては迂闊に手出しすることは出来ず、また複数に拠点を持つ事で、居場所も特定出来させないって寸法だ。


俺とゴーツは現在、その拠点の中の一つを依頼主から任されており、ここの地下には攫ってきた女達を監禁していた。


依頼主によれば、奴ら女の身柄は順次、王都の貴族や権力者に見定められ、買われていく予定となっている。その用途としては、奴隷や使用人など様々であろうが、俺たちにその後の事まで知るすべはなかった。

考えようによっては、ここでの生活よりも裕福になるものもいるだろう。勿論、逆もまた然りだが。


「くっだらねぇ」


「えっ?どうしました?」


「チッ、なんでもねーよ。行くぞ」


「あ、兄貴!ちょっと待って下さいよ!」


俺たち二人は地下の監禁場所へと向かう。


ここの構造はかなり特殊な作りになっている。

外見ではただの小さなボロ屋にしか見えることはないが、その実、地下には膨大な敷地が広がっていた。


こんな無駄に金がかかるものを依頼主がわざわざ建造したのには、何か理由があるのだろうが、俺には全く持って興味がない。

要するに金を貰えればそれで終いな関係であり、それ以上深く取り入る気もなかった。

向こう様もそんな俺の態度が気に入ったのか、こうして少し前から仕事を回してくれるようになっていた。


俺とゴーツは下に移動しようと、普段は見えないよう布で覆ってある隠し扉を開き、そのまま梯子を降りる。

下に到着し、蝋燭の火で照らされた薄暗い通路を歩く。

少し歩いた先には、女達の幽閉されている場所があった。


そこは地下にしては広々とした空間となっており、牢屋は10人程の女なら一度に収監できるくらいの広さを備えていた。

また、牢屋の出入り口は無数の鉄柱で強固に固められており、とてもではないが女には脱出が不可能な構造になっている。


ここには現在、3人の女を監禁している。

その中の二人は、ここに来てから早々に全てを悟り、諦めの表情を見せていた。


女というのは、強い生き物だ。

大抵の女はその諦めの表情の裏で、自分の身の振り方について冷静に頭の中で計算することが出来る。


具体的に言えば、ここを訪ねてくる権力者のお眼鏡に何としても叶おうと、他の女を平気で蹴落とし自らを売ろうとすることも珍しくない。

事実、そんな女を何人も見てきた。


しかし、そんな中にも当然例外はいる。

絶望して無気力になる者。

或いは、最後まで自分の誇りを貫こうとする者。

まあ結局、女心など男の俺が知れたものではない。


堅牢な牢屋を前にして、俺とゴーツは改めて中の様子を伺う。

中にいる女二人は俺達の様子に気づくと、横たえた身体を這いつくばるようにして、こちらに摺り寄ってくる。


「お願い…食事と水を…」


身体は痩せこけ、今にも力尽きそうな緩慢な動きとは対照的に、こいつ等がこちらに向ける瞳には、明確な意思が宿っている。

この二人はきっと、生きるという目的の為に手段を選ばない類の女だろう。


しかし俺はそんな牢獄の中で、その二人とは明らかに違う様子でいる、もう一人の女に目を奪われていた。

その女は俺達の存在に気づきつつも、他の女どもと違い反応を見せることもない。

一人佇んでこちらを睨みつけるような視線を送っていた。


…ふん。コイツは余程、誇り高い女ってところか。

だがこの夢も希望もない状況の中で、それがいつまで続くものか。

これがその女に対して抱いた、最初の感想だった。


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